この世界の片隅にのレビュー・感想・評価
全1026件中、161~180件目を表示
幸せのありか
彩の国シネマスタジオの上映でようやく見ることができた。
評判がいい映画だったからか、この上映会で席がほぼ満席に埋まっていることも珍しかった。
原作、ドラマを途中まで見ているので、大体のあらすじを知っていたが、細かい部分ははしょっていても、後半に持ってきたりしていて、そうやって二時間にまとめたのかと構成の仕方に舌を巻いた。
すずさんのほんわかとした雰囲気に、戦時下の苦しい時期でも笑いの堪えない話になっていて、戦争の時期を描いた作品でも悲惨さばかりが目立つような作品ではなくて良かった。
周作とすずさんの嫌みのないラブシーンもどこか微笑ましかった。
一つ気になったのは、すずを訪ねて北条家にやって来た水原を周作は納屋に留まらせるが、そこにすずをやって鍵までかける。
原作をそこまで読んでいないから、分からないが、周作は嫁さんが一夜の過ちを犯さないのか不安ではなかったのだろうか?
それよりもすずのことを信じているからこそのことなのだろうか?
すずは水原の気持ちを受け入れず謝り、次の朝送っていく。
そして、結局習作と出掛けた時に列車の中で喧嘩してしまう。
周作は、すずの水原に対して気兼ねなく話す態度に苛立ちがあったようだ…。
鍵までかけたのに、結局気にしてるのって…💧
戦局が悪化していくなかで、すずが広島に帰ると言っていたときには、原爆に巻き込まれるのではとヒヤヒヤした。
すずが帰らず残って難を逃れたときはほっとしたが、結局すずの家族は巻き添えを食らっていたことは、悲しかった。
爆弾で、姪と右腕を失ったすずさんが、家に落とされた焼夷弾を一生懸命消そうとしてた姿と、玉音放送を聞いて、畑になだれ込んだすずさんの「自分は海の向こうから来た米や大豆で出来ているから暴力に屈しないといけないのか」と項垂れながらはいた台詞には、それまで明るかった話とは打って変わって、辛い思いが涙となって溢れた。
玉音放送を聞いたあとで対極旗が掲げてあったのがよくわからなかったが、原作ではアジア諸国への占領下への台詞が盛り込まれていたことがわかったが、アニメでは台詞が変わっていて余計に不自然に感じた。
ただ台詞は外国のことを一回の主婦だったすずさんが当時どこまで理解できていたのか謎ではあるので、映画の方が自然な流れではあるように感じる。
人はどんな時でも逞しく生きていける
通常スクリーンで鑑賞。
原作マンガは未読。
太平洋戦争中、呉に嫁いだ主人公、すずさんの日常を通し、普段は気づいていないけれど、いつもそばにあるかけがえの無い大切なものを、繊細な優しいタッチで描いており、戦争を題材にしているのにも関わらず、悲しい出来事は起こるものの、最後には心が暖かくなっているような作品でした。
戦局の悪化に伴って食糧配給もままならなくなる中、工夫して朝昼晩の食事を拵えたり、暑くても寒くても畑で野菜を育てたりと日々の家事をこなしながら、すずさんは男手が無くなった北條家を持ち前の大らかさで懸命に守っていました。
ですが、ささやかな日常に空襲警報が鳴り響き、爆撃によって見慣れた景色が失われていきました。戦争がもたらす数々の理不尽によって大切なものを踏みにじられ、奪われてしまいましたが、それでも生きていこうとする姿に感動しました。
殺伐とした世情でも朗らかさを失わなかったすずさん。生来の性格なのかもしれませんが、「笑顔を無くしてしまったら終わりだよ」と教えてくれているような気がしました。
普段は当たり前のようにそこにあって、ついつい見過ごしがちになってしまいますが、私たちが営んでいる暮らしや日常こそがかけがえの無い宝物であり、それを必死に守っていくことが、私たちの生きていく意味であるように感じました。
それが簡単に軽んじられたり蹴散らされてしまうことにこそ怒り、涙し、それを打破するための強さを学ばないといけないのかもしれません。今のような社会だからこそ、すずさんのような生き方が求められているのかもなと思いました。
どんな困難な状況にあっても、どうにもならなさに悔し涙を流しても、逞しく生きていくことが出来るのが人間であり、その素晴らしさを高らかと歌い上げた人間賛歌の名作だなと感じました。ずっと大切に観続けていきたい。
[余談]
観ていてほんわかとした気持ちにさせられるすずさんのキャラクターを、声優初挑戦ののんが、初めてとは思えない演技で表現しているなと思いました。女優として映画などに出にくい状況となっているのが本当に残念でなりません。
[追記(2019/08/03)]
私の通勤路には機銃掃射の痕のある塀が残されており、それを見る度に当時を生きていた市井の人々の暮らしに想いを馳せてしまいます。空から爆弾や銃弾の降り注ぐことが日常で、生きるか死ぬかと云う状況に震えながら過ごす。なんと恐ろしくて、理不尽な日々なのだろうか。
7年前に亡くなった祖父からは戦争体験を何度も聴かされました。海軍の水中測敵兵だったと云う祖父は、終戦間近の頃海軍基地での演習中に空襲に遭い、命からがら爆発と炎の中を逃げ回ったそうです。炎に巻かれ右腕が千切れたまま走っている同僚を目撃したと話していました。
[以降の鑑賞記録]
2018/07/22:Blu-ray
2019/08/03:NHK総合
※修正(2024/04/19)
すずさんが生きた時代を一緒に生きた感覚。
永久保存版の傑作だと思う。
この広い世界と、これから先の時代へ、この映画を届けたい。
戦争映画なんてくくりではなく、これからの世界を考えるためにも、ぜひ、観て、語りあいたい。
のんびりしたテンポ。
童話チックな画風。
遠い過去に生きた”誰か”ではなく、ひょっとしたら、すぐそばで生きている、クラスメートにもいそうな”すずさん”が体験した出来事。そんなふうにかんじさせてくれるのんさんの声。
他の共演者の演技。
それでいて、監督がこだわりに抜いた時代考証と、原作に裏付けられる時代感。
時代に翻弄されつつも、その土地に根付きお互いを思いやり助け合いながら生きていく姿。
山間の一番外れにある家で暮らす人々。中央(政府)からみたら、”世界の片隅”だけれども、しっかりと人が生きていく姿を丁寧に綴る。
その愛おしい日常が、一瞬にして奪われる。
唖然とし、一瞬何が起こったのか戸惑う。
愛しきものの安否を求めさ迷う。
そして、事実を知った時…。
喪失感。
否認。
怒りとも微妙に違う慟哭。
それでも、日常は続き、生の営みは続いていく。
失った心を埋めながら。
様々な感情を抱えながら。
★ ★ ★ ★ ★
「戦争加害者としての責任」が描かれていない等の批判があると聞いたが、
あの頃の庶民はこんな感覚だったんじゃなかろうか。
思想統制・情報統制が行われていて、ほとんど家の周りの世界しか知らなかったあの頃。
実際に政府が何を考えて行い、世界がどうなっているのかも、わずかばかりに伝わってくる歪曲された情報をもとに判断するしかない。
情報をうのみにせずに、自分の頭で考えて行動することを訓練するはずの学校は、上からの指示に従うだけのロボットを作るだけ。
(反対に、自分の頭で考えた人の末路。)
軍事工場がどのような意味を持つのかも深く考えず、就職先ができた、格好いい戦艦が自分たちの力で作れたと喜ぶ。
思想統制・情報統制の影響で、悪い奴らをやっっつける尊いものを作っている感覚すらあるのだろう。
その一方で。
心では嫌々出征兵士を送りだす場面や、学校に行っても意味ないと、本当に生きていくために必要なものを見極める力が描かれる。
機銃掃射、焼夷弾、原爆投下等は迫力満点。観ているだけなのに、鑑賞者である自分が犠牲者になるのではないかという臨場感満載。
反面、亡くなられた方の様子、原爆被災者の様子は、さらっと書きすぎていて、その痛みは想像するしかない。
否、すずさんを襲った不慮の事故のあと、すずさんや義姉の苦しみ様はきちんと描かれているのだが、わかりやすく喚き散らして心情を吐露するとかの方法はとらず、時にイメージ的に表現され(直後の描写)、時に心を押し隠して態度・行動にでるという日本時的には”あるある”で表現される。
見方によっては、のほほんと、幸せに暮らしているように一見映る。
実際は、祖母に嫁入り道具としてもらった着物をモンペに直すとか(私だったら絶対嫌!!!)、家族が死ぬ、友達が死ぬ、お腹いっぱい食べられないとか、一緒に暮らしていれば喧嘩もするだろうけれど、それがかなわない夫婦とか、本来しなくていい苦労が次々に襲ってきており、その度すずさんとその家族は苦しみながらもユーモアで乗り切ろうとしているだけなんだけど。
ラストも、一見ハッピーエンドで終わるが、原爆症がどういうものかという多少の知識を持っている我々からしたらその後がとっても気になる。決してハッピーエンドではない。
それでも、
広島や長崎は復興したし、(だから福島をはじめとする被災地も復興するし)、
一緒に暮らす人を思いやりながら生きていけばなんとかなると、 この映画を見て思う。同時に、
戦争等の人災によるいらぬ苦労や悲しみは、二度と起こしてはいけないと誓いたくなる。
そして、
インターネットをはじめ、一方的に提供される情報だけを信じる怖さにも自戒せねばと思う。
童話チックな映画でありながら、こんな生活に追いやった状況に怒りを感じ、それでも、すずさん達の生きざまに希望を見る。
印象なんて、一言三言で済まされるものではなく、いろいろな思いが沸き上がってくる。
この漫画と映画に出会わせてくれてありがとう。
今を生きるこの世界の片隅から、生きとし生けるものすべてに、心からの感謝を伝えたくなる。
現代と戦中をつなぐ作品
戦時中の家族や暮らしを描くドラマや映画の多くは、登場人物に感情移入できないことが多かった。彼らの行動や描かれた心情が、自分のものとはかけ離れているように感じられたからだと思う。しかしこの作品は、現代人から見て「無理のない」心の動きと行動で戦時下の暮らしを描いている。
戦場から見た戦争の悲惨さ、地上戦、原子爆弾、空襲の恐ろしさを伝える映画作品は数多くあるが、民間人の若い女性の目から見た戦争像を描くのは斬新に感じられた。
「火垂るの墓」が子どもの目から見た戦争を描いているとすれば、本作品は民間人の暮らしに戦争がどう入り込んできたか、その過程をうまく描き出している。
戦闘シーンや残酷な映像を排除し、あくまでも人々の心情に焦点を絞り続けた一貫性もこの作品のメッセージ性を強めていると思う。
アニメだからこそのリアル
戦争には多くの人が関わる。
戦争を起こす人、
戦争に出向く人、
そういう人たちを待ちながら、日々の生活を営む人。
この映画は最後の人々を描く。
前半はまるで天国のようなのどかな田舎の風景。
時代が時代だけに、顔も見たことがない相手との結婚、なんて風潮もあれど、それでも親切な義理の家族に囲まれてほんわかすごしていたすず。
しかし死の淵ギリギリまで追い詰められ、広島では家族をなくしたすずはある日ふとしたきっかけで、何も知らずにボーッとしたまま死にたかった!!と泣き叫ぶ。
人の心や行動は、つじつまが合う合わないというものではない。
だから映画やドラマは無理やりつじつまを合わせる。
しかしこの映画ではつじつまを合わせないまま、人が生きるままにする。
この人の自然な行動を、演じられる俳優がいるだろうか。
このリアリティを再現できたのはアニメだからだろうと思うし、逆にこれをアニメでやろうと考えた製作者は何を思ってアニメでいこうと思ったのだろう。
反戦をあからさまに叫んでいるわけではないが、これを観て、まー仕方なくなったら戦争
もアリだねなんて絶対に言えない。こんな状況で、呉の彼らみたいに強く、笑って過ごせる自信なぞない。地獄の底で。
ただただ、恵まれた自分の境遇に感謝するのみ。
ああ、本当によかったこの時代の日本に生まれて。
日本のアニメーションは素晴らしい
この作品の主な舞台である 広島県呉市
わたしの地元がここであるため鑑賞
一瞬で “描かれた街はあそこか”とわかる
“原爆”や“ヒロシマ”の話だと
ほとんどが広島県広島市に焦点が当てられる
しかし この映画では呉市が描かれている
そのため じぶんにとっては地元理解にもなった
能年玲奈(のん)の素朴な声が
感情移入を簡単にさせてしまう
爆弾による被害の描かれ方が今までにない
広い意味で だれでも観ることができる作品
本当に日本を飛び出して世界でも
永遠に観られ続けていてほしい
平和への祈り
観終わり、友とこの話題が出るたびに泣けてきた
今でも…思い出すと何故か右目から涙が出る…
この涙は、戦争に対する悔し涙なのか…
いや、周作とすずのピュアな夫婦愛に共鳴するのか…
12週連続してトップテン入りしているだけある中身の濃い名作です。
市井の人々は戦争に巻き込まれ振り回され…
哀しみだけが残る…
でも、ひたすら前を向いて生きなきゃいけない。
こんな理不尽な事は、二度とあってはならない…。
すずの心が壊れたシーンが辛かった…
どれだけ心を亡くした生活を送ってきたかが
延々と描かれています…
でも、すずの嫁いだ家族や夫との温かい思いやりに心が洗われます…
広島の呉市には昨年、夫と「大和ミュージアム」に行った経緯があり、
広島港から船で渡ったのですが…
自衛隊の船が何隻も間近に見え、
美しい海との対比を強く感じました…
この名作から
平和な世の中の今、日々に感謝し強く生きなさい
との温かいメッセージが聴こえます…
今までの日本映画をマンガ・アニメで表現してみた作品という印象でした。
原作未読。見始めて最初に思ったのは地味ということ。
ちょっと日本昔話風の絵で、派手さがまったくない。
柔らかな感じで、映画の内容とはこれ以上ないくらい合っているのだけれど、これではシネコン的な映画館ではかからないと思った。
あと最初に思ったのはのんさんの声。
一発で顔のイメージが浮かんできてよくないかも?と思った。
でも、見ているうちにのんさんと主人公のキャラクターが合っているので、徐々に重なってきていい感じになった。
顔がわかるのも、主人公のキャラクターと合っていれば、相乗効果でよくなるのかもしれない。
この映画はお笑いで言うつかみ的なものはないけれど、慣れてくるとじわじわくる感じになっていた。
見終わった感想としては、期待が大きかったせいかもしれないけど、そんなに感動したという程でもなかった。
アニメとしては同時代を扱っている宮崎監督の『風立ぬ』の方が上だと思う。
確かにいい映画で、キネ旬1位でも文句ないけれど、今までの日本映画で原爆を扱った映画とあまり変わらない感じがした。
というか、今までの日本映画をマンガ・アニメで表現してみたという方が近いかもしれない。
最近のものでは『君の名は』も、題名からしてそんな感じだけれど『転校生』その他をくっつけたようなアニメ映画だった。
この映画の場合は今までの原爆を扱った映画に『三丁目の夕日』を加えたような内容だった。
実写でもいけたのだろうけど、その場合はたいへんな製作費がかかるし、かなりガチな映像になるので、万人うけは難しい。
その点アニメにすれば、ガチではなく、かなりソフトな面白い感じの映像になるし、万人に受け入れられて、若い人にもうけて、外国人にも見てもらえる可能性が増える。
興行的にも望めるし、日本映画の復興にもなるし、いいことずくめ。
この映画とか『君の名は』みたいな作品は日本映画とアニメの新しい形なのかもしれない。
こういう映画を待っていた。
戦争映画を荒々しく描けばそれはいい映画になるだろう。
その世界を知らない人にとっては新鮮だし、戦争というものを知る良い機会になる。
ただし、そういう世界で生きていない人間がいたのも真実で、戦争を生き延びるための生活を、ゆったりとした映画で表現するという新しい映画がここにあった。
戦って死んでいく映画を見るよりも、生きるために戦争を生きていた人々の暮らしを見ることのほうが、平和のためには必要である。
素晴らしすぎる。文句の付け所がない傑作!
泣いた。そして笑った。こんなに感情が揺さぶられる映画は初めてでした。
自分は勝手に戦争描写が大量に出てくるような反戦映画なのかなぁと思っていたのですが、そんなことはなく。戦争という過酷な状況の最中に生きたごく普通の家族のお話でした。苦難を経験しながらも健気に生きるすずさんの姿に涙します。
この先ずっと語り継がれてほしい物語。
この素晴らしい映画を完成させてくれた制作陣、そしてその素晴らしい物語の生みの親である原作者さんに感謝。
ゆっくり観たい
原作未読
普通の生活が送れることの素晴らしさというかなんというか、戦争にも屈っさず生きようとする姿勢が健気
映像は暖かみがあり時に牙をむく感じでメリハリがきいていて良い
が、テンポが良く間が少なめな感じが、おっとりしたイメージに合ってないのか逆に軽快な雰囲気で良いのか…
ジブリ「火垂るの墓」の、ソフト版!
「火垂るの墓」をもっとソフトにしたような映画です。
するどい事を、さらっと描いているので、よく観ていないと見落とします。
★子供を引っ張っていたお母さんが、椅子に座って休んでいるうちに。。。
★家の脇に真っ黒な人が座っていて、その人がいなくなっても
黒い影がその場所に焼き付いているのはなぜか。。。 など
原爆や戦争の基礎知識があればなおよいですが、重くない仕上がりで、子供から大人まで可。
監督さんは、全財産を使って作り、マイナー映画館で上映したら
海外評判も良く、ヒットしてしまった。
この制作時の話も感動ものです。
ぜひ観て頂きたいです。
伏線やストーリー性もさることながら、戦時中の日常と非日常の交錯の描...
伏線やストーリー性もさることながら、戦時中の日常と非日常の交錯の描写も非常に巧み、かつヒューマンストーリーとしても上質という素晴らしい作品。残酷かつのどかでもある。人生の中でも大切にしたい一作となった。
全1026件中、161~180件目を表示