「みぎてのうた」この世界の片隅に ねこおじさんさんの映画レビュー(感想・評価)
みぎてのうた
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話だけ見ると、特に何が起きる訳でもない退屈なはずの前半だが何故か観入ってしまうのは、のん演じるすずさんの愛らしさが非常に大きかった。
「あまちゃん」でも思ったが彼女は演じるというより、そのキャラのまま画面の中で生きている感がある非常に稀な才能を持った女優さんだと思う。彼女が演じなければこの作品がこんなにも素晴らしく心に残るものにはならなかっただろう。
やがて、どこでどうしちょるかと思っていた戦争がすぐ目の前にやってきた。ほのぼのした絵の中に突然襲いかかる現実。それまでとはあまりにもギャップのあるスピードや音、残酷な破壊の世界にあの愛らしいすずさん達が晒される。
我慢して我慢して、あるものだけで生きていく。それがうちらの戦争ですけ。
こんなに失った、それでも表には出さずに耐えてきた。終戦の日、すずさんの感情が爆発したあのシーンにどれだけの思いが詰まっているか計り知れない。素晴らしいシーンだった。
そして、すでに感情の高まりがピークを迎えた我々に、壊滅した広島で物語のラストへ向かうあのエピソードが描かれる。コトリンゴの「みぎてのうた」と共に描かれた映画史に残るといっても過言ではない本当に心に残る演出だった。
片渕監督、こうの史代、のん、コトリンゴ
この組み合わせもまた一つの奇跡的なマッチングだったんだろうと思う本当に素晴らしい作品。
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