「「アニメーション」という表現倍体の素晴らしさ!」この世界の片隅に timebanditsさんの映画レビュー(感想・評価)
「アニメーション」という表現倍体の素晴らしさ!
この作品を観る直前に「君の名は」を観た。
その時にも感じていた、いや、それ以前からずうっと感じていた、最近の、この手のアニメ大作に付きまとう、妙な違和感。それに対する答えが、この「この世界の片隅に」で出たような気がした。それは「アニメーションという手法で表現する作品の意義」。「君の名は」の事は、そっちのレビューで書かせてもらうので控えるが、そういう意味では、この作品は本当に、「アニメーション」という表現媒体でなければ、絶対不可能だった、戦争映画の傑作です。決してこれまでのような、戦争は悲惨だ戦争はいけない、という所謂、「反戦映画」という単純なくくりでは収まらない、あくまでも「戦争」を背景にした映画。でも戦争が背景にある以上、その状況描写に妥協や省略は決してない。「広島」が舞台だから当然「あの惨劇」も。 実の兄は戦死、両親も原爆で失い、妹も被爆、自分は地面に落ちた時限爆弾で大事な右手を失い、同時に義姉の娘の爆死を「殺した」と責められる。これ程までの悲惨な境遇の主人公の内的感情のホトバシリ、怒り、悲しみ、切なさ、苦しい、辛い、嬉しい、全ての感情と、それに伴って生じる頭の中のイマジネーションの映像化は、本当にアニメーションだからこそ、表現できたと思う。これがアニメーションの本領であり、アニメーションで表現する作品の意義だと確信しました。戦争に突き進み、不安や恐怖の中でも感情に流されず、時にはユーモアを交えて日々淡々と生きていく主人公「すず」のあの愛くるしく健気な姿。そして何よりも、声を担当した「のん」さんのフワアッとした存在感が、また主人公のキャラクターにぴったりマッチしている。私はアニメの声は声優がやるべき物だと思っている一人だが、これは別格だ。自分が望まぬ内にどんどん周りにつき動かされて、自分というものを上手く表現できぬまま流されていく主人公。でも只のお人好しの「良い人」ではなく、途中々々で感情をほとばしらせる。その表現、演技、「のん」さんは素晴らしかった!!皆、観るべき映画です。もう一、度言います。傑作です。エンドロールの、「紅」で描いた絵による、遊郭の娘のエピソードも本当に泣かせます。
最後の「右手のバイバイ」・・泣けて泣けて・・・。
歌も良かった!!また観ます!