「日常」この世界の片隅に U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
日常
女は凄いと思った。
どんな事が起こっても、何が起ころうとしてても「生活」が基盤。
衣食住の全てを取り仕切ってるのが女性なのだと畏怖にも近い念を抱く。
在り来たりな日常から物語は始まり、戦争→原爆と激変していく時間。
だけど、そんな中でも女性たちはメシを用意し、着物を繕い、家から離れない。
群れるし、情報交換に落ち度はないし、支え合うし、創世する。
命を育む使命に従事し疑わない。
命の器であり、その命が消滅する事をも抱え立ち上がる。
世界中の女性が結託し、国連の運営も国のトップも女性がなれば、戦争など起こらないんじゃないかと思える。
「母」として「命を継続させていく者」として、この作品に疑問を投げかける者など居ないのではなかろうか?
世界規模で殺戮が行われる中、愚直に命を維持していく本能に驚かされる。
ほんの数人…自分の周りの手が届く範囲、抱え切れる範囲の幸せを願う。
それが彼女達の世界の全てなのかもしれない。
男は社会に翻弄されっぱなしだが、女性は生きるという人間の根幹に対して常に誠実だ。
逃げない。
いや…逃げれない事を知っているかのようだった。
ラストにどこの誰ともしれない戦争孤児を家に連れて帰る。
ボロ布一枚纏った子供に服を与え、針仕事を教えるエンディング。
まるで、血族という枠組みさえ無いものかのようだ。
女は次世代を育て、伝承し国を育てる。
また、それに疑問も抱かなかった。
寄り添い生きていく。
そんなシンプルで強固な信念を遺伝子に刻んでいるかのようであった。
戦争の悲惨さを語るシーンもありはするが、そんな中でも日常を生きていく女…というか、きっと彼女達には戦争云々よりも、今夜の団欒の方が大問題な案件なんだろうと思えた。
この世界の片隅になんて遠慮がちなタイトルではあるが、片隅とか全体とかそんな区別は持ってないんじゃないかと思える…言うなれば、片隅が全世界であり、その片隅の全世界をいとも容易く吸収し共有していけるのが女性なのではないだろうか。
男は戦いから逃れられないよね…だって開拓していかなきゃならないんだもの。
まあ、女が戦争しだしたら男のソレとは比べ物にならない気もしなくはないが…。
なのですかねえ。
兎にも角にも戦争云々よりも、戦時下で世界規模の殺戮が行われてる中で、それでも生きて、食べて、笑って、育てて…生きる本質のようなものでしょうか?女性のDNAに刻まれてるようでした。
こりゃ頭か上がる訳がないと思えましたねw