「ちょい残酷な童話」この世界の片隅に レインオさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょい残酷な童話
絵本みたいな画風/スタイルでありながら、現実にいる人々の共感を起こし、色々私たちに考えさせるのがこのアニメ映画の最も優れたところじゃないかなーと。
ストーリー上には二つの部分で分けられると思う。すずが自分らしく暮らすのと、戦争で失ったものもあったあと心が動揺してる部分。
もともと女の子一人、そしてお嫁になったあとの一人の生活を中心に、その女の視角から戦争を表現するのはもう全てを生活化したものである。(特に女の子の目線と気付くのは、はるみと海軍軍艦に興味を示すなどのところ、戦争に対する予備知識不足も晴美の死・すずは手を失うことに繋がるのだろう)
その中、結構絵本っぽい画風であっても夏に家で寝転んだり、天井を見つめたりするシーンは妙に共鳴を起こす。教室で鉛筆を削るところも。それゆえ、戦争の原因で生活上に起こった些細な変化もそのまま観客に伝わってくる!戦時はそんな感じだなあーと感心できる。
前半のときすずは料理に夢中になったり、服づくりや絵描きもしたりしてマイペースで虚しい戦争環境への反抗とでもあって生きられ、他人事のように戦争の話をしたり憲兵のことでただ笑ったりしたが、後半には失いものもあって特に絵を描けなくなるショックは反映される。昔のこと(前半)に対して一種のノスタルジー(晴美との楽しい時間をおもいだすなど)もあり、戦争そのものの悪影響がどんどん広がっていくのが感じられる。
戦争の中、すずは物作りもして、戦争の破壊に対してまだ根強いところを見せたが、また自分の居場所について考える。どこに行っても戦争から逃れることできず、映画の中にある広島の道並みは絶望の匂いがする。最後には、自分が強くなること、自分らしく生きることが唯一の道だというメッセージもあるのだろう。特に日本が太平洋戦争に負けたことに対して、すずは今まで何なんだろうというふうに問いかける。それは勝負のことより、日本が戦争/侵略への道を選んで何がいいということに問いかけてると捉えたい。
そして人に考えさせるだけでなく、この映画のスタイルも好き。所々で人を笑わせるし、人物も広島の環境もかわいいところがあってそれらにも惹かれる。すずは絵描きが上手という設定はストーリー上にもスタイル上にも貢献する。そのおかげでかわいい要素も増え、暖かい絵になって戦争の残酷さとの対比が鮮明となる。一方、戦争も絵のように表現されるところがあり、飛行機の周りの爆発は、花火のように空で咲き、代わりに絵で表現するシーンだったら水彩が彩る。戦争も、単にすずの絵にあるものなら...
また最初のシーンで水原くんが海を眺める場面をすずは絵にした。その時一瞬全て絵になって水原くんはその絵の中にすずの書いた絵を持って移動する。海と空は綺麗な色で繋がり、海には無数のうさぎ。それは、あの時天真爛漫なすずが目にしたもの。そしてそのシーンは誰においても印象を残すのだろう。それは映画の最後まで、主人公すずそして観客の記憶・思い出となる。
そのほかにもこの映画はメッセージ伝達に色々工夫して、アニメは一体どこまでできるのか、実写映画との違いは何なのかを、教えてくれる。何回もスクリーンが数秒黒くなり、人物の輪郭だけきらめく。樹に引っかかった窓のフレームに小さなフレームごとにすずの広島の家への思いを示す。これらの発想一つ一つ巧妙で製作者が工夫したことを伝えてくる!
人の目を引く以上、アニメーション映画の固有性、アニメしかできないことで色々人に感動を与え、今の生活まで影響を及ばすこともできる考えをさせる必要もある!広島原爆をも題材に、平和を呼び掛け、人に歴史を忘れないようにすることが大事。