「心のかさぶたをいじるような」この世界の片隅に ( ;・ω・)yさんの映画レビュー(感想・評価)
心のかさぶたをいじるような
観てから一週間経った今でも、心のどこかがウズウズして思い出す。かさぶたをいじるように、自らの痛みを心地よく感じるように思い出す。
結論がハッキリと分かりやすい映画ではないので、つまらない人にはつまらないと感じると思います。
そんな私も岡田斗司夫氏が大絶賛していたので、期待をして行き、観終わった後は、こんなものかと思っていました。
しかし、涙は自然と流れ、じんわりとよく分からないものが心に残り、ずっと気になり、原作を買い、ほうぼうのレビューを見て納得がいきました。
絵柄はリアルじゃないですが、その日常はリアルに感じられます。
人があっけなく簡単に死に、それが日常になると悲しみも無く。整然と進軍してくる戦闘機を美しいと感じ、恐怖を覚える前に蹂躙される。
そのリアルを前にすると、人間がとても小さく見えます。
片隅に生きるのは、すずさんだけではなく、私たち自身も小さく儚いのです。いつ死ぬかも分からないし、どんなに頑張っても、片隅の物語にしかなりません。
だけど、支えあう周りのみんなの気持ちが、ものごとの大きさの執着を捨て去ってくれます。そんなものはくだらないよ、と。
様々な経験をし、秘密を抱え、他人の秘密を知りながら気遣い、いたわりながら支えあう。とても優しい気持ちになれます。
現代のインターネット社会のように、他人の揚げ足をとり、さげすみあう姿が矮小に感じます。自らの小ささを認められれば、他人を気遣い、優しくなれるのだろうか。
観たほうが良いとは言いません。若い人がこれを観て分かるのだろうか? と思うからです。ただ、年を経てから観てもらえれば、分かってもらえるだろうし、何かの救いにはなると思うのです。
この映画は反戦映画ではないでしょうが、戦争になれば誰かが死に、自分も犠牲になるかもしれません。それでも、誰かの一部になって残るのだと思います。この映画のように。
あと、すずさん萌えがあるのは否定しません。
声優ののんがバッチリとはまり、こんなお嫁さんがいたら良いなと、感情移入してしまいます。でも、そうじゃないです。本当に。