「とても美しい」この世界の片隅に 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
とても美しい
クラウドファンディングでの融資が話題になっていた本作、原作の空気感をどう表現できるかが気になってたのです。
これが見事に再現されていました。
端から端まで細かく描かれていて、何よりカットがとても美しい。
コトリンゴの音楽もとても合っており、作品に広がりを持たせていました。
キャラデ・作監の松原秀典さんも、原作の雰囲気を生かした見事なキャラクターを描き出しています。
戦争がテーマの作品ですが、重く苦しい内容も主人公すずの視点なので、どこかコミカルでふわふわした雰囲気に描かれています。
のんさんの演技もそうさせるのでしょう。
また随所に食べ物をうまく差し込んでいて、当時の食事事情や主人公の心持ちが伝わりやすいのも良かったと思います。
その食べ物というキーに合わせてなのでしょうか、玉音放送を聞いたすずが慟哭するシーンのセリフが変わっていました。
ある意味とても重要なところなので、とても思い切ったシフトだと思います。
そして何と言っても絶対作品を作ると決意した監督の気概でしょう。
静かな作風なのに力強さを感じるのは、そんなところもあるのかもしれませんね。
今回クラウドを使って素晴らしい作品が作れるという、一つの指針になったのではないでしょうか?
同じ戦争の映画で真逆のような作品ですが、塚本監督の「野火」と同様に一人でも多くの人に観てもらいたいと思いました。できるだけ長く上映してほしいものです。
私は今回この映画と出会えた事が嬉しくてなりません。
儚くも強くて温かい、とても喜びに満ちた作品です。
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