「感性豊かな映画」この世界の片隅に villageさんの映画レビュー(感想・評価)
感性豊かな映画
空想を描いたり絵を書くのが得意で、おっとりとした不器用な女の子が主人公。
見終えた一番の感想は、彼女の目を通した世界の捉え方の演出が、とても感性豊かだなぁと思った。海の白兎然り、戦闘機に向けた空に描かれた砲弾然り、意識を失ったシーン然り。
昭和十年から段々と戦争の足跡が聞こえ始める戦時中。軍港の街、呉が舞台。
そこて暮らす日常のシーンの連続で話が進み、戦時中であっても生活は続いていく。
後半には、かなりショッキングな出来事もある。それはもう決して取り返しの付かない、本当に本当に心痛める出来事なわけで。でも、それでもなお、生活は続いていく。続けていかなければならないのである。
この映画が一体何を伝えたかったのかと考えたときに、戦争の悲惨さというのもあるのだろうけど、それはただの設定に過ぎないような気もする。すずという1人の人間の生き方、世界の捉え方、周囲の人たちとの関わり方や懸命に生きる姿、そういうのを見せたかったのかなと思ったりもする。「いじらしい」という言葉が、結構しっくりくるかもしれない。
まあでも、意外と捉えどころがないというか、なかなか難しい映画でもあるなぁと思った。安易な感情移入を許さないというか、各シーンの強弱を敢えて避けているような印象すら感じた。
ただやはり演出は素晴らしくて、思わず唸ってしまうところは多々あった。能年さんの声も、すずのキャラクターにぴったりハマってて、感情の載せ方もうまいなぁと思った。
正直すごく自分にハマった映画とまでは言えないけれど、もう一回見てもいいかなと思った。それくらい強い印象が残った。
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