「原作を既に読んでいたからこそ」この世界の片隅に minaseさんの映画レビュー(感想・評価)
原作を既に読んでいたからこそ
この作品の評価、感じ方は人それぞれだと思う。
とりあえず私は原作を既に読んでいるから、その立場で感想を書くと
①原作者は何を伝えたかったのか
②映画として監督がやりたかったことは
この2点で述べたい。(ネタバレは無しで)
①まず前提として、こうの先生はこの作品の前に「夕凪の街 桜の国」という漫画を描いている。この作品はとても感動したのだけど、なぜ感動したのかというと「原爆を描いているのに、それを直接描かず、戦後を描くことで、原爆の本当の悲惨さと、それに立ち向かい、幸せになるために前向きに生きてゆく」ことを描いた類稀な作品だったからだ。だからこそ、「じゃあ次は戦時中においても健気に生きる主人公を描こう」と先生が思われて描かれたのがこの作品なのだ。別にこの作品が「昔の日本人は今と違って奥ゆかしくて真面目で質素倹約で…」と今の我々に説教したい訳じゃない。事実として日本は戦争を体験した。多くの人が苦しんだり死んだりした。でもみんな必死に生きていて、ささやかな幸せを送ろうと頑張ってた。悲しいことがあっても小さな希望を見つけて生きていた。それをただ提示しただけのことなのだ。別に劇的なドラマがある訳じゃない。それでも私達にとってはかけがえのない作品になるのだということ。私達が生きる上でこの作品は必ず「心の栄養」となり得るだろう。
②当然だが、片淵監督こそ主人公「すず」を最も愛した人に違いない。この作品はジブリなんて目じゃないくらいにリアリティを追求している。「この世界の片隅に、ウチを見つけてくれてありがとう」だからこそ片淵監督は、「すず」の存在を確固たるものにするために、徹底した時代考証や、アニメ演技をこだわり抜いたのだと思う。激しい空襲に遭い、焼け野原となった呉において、それでもこの子は生きていたんだというメッセージを私は感じ取った。
まあいずれにせよこれは映画であり、どのような感じ方があってもいいと思うが、とにかく今は、この作品が海外でどのような反応を受けるのかが楽しみで仕方ない。
あと「夕凪の街~」のアニメ映画化もついでにお祈りする笑