劇場公開日 2016年11月12日

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「戦争という名の狂気と日常」この世界の片隅に Akira Doubaraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0戦争という名の狂気と日常

2016年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

舞台は、広島市と呉市。両市の描写については、多少の残念な描写があったが、戦前の両市を知っている方ならば、満足できる描写だと思う。淡々とした日常に戦時中という非日常が影を落とし、生活が苦しくなっていく描写は素晴らしい。特に呉が軍港であったため、他の都市よりも金さえあれば、闇市で当時の贅沢品が買える描写は、特筆に値する。

まあ、戦争中という悲惨な情景(空襲や原爆投下等)よりも、すずの日常が主の描写なので、空襲や原爆投下の描写が薄めに描かれているのは仕方ない。むしろ、食料や、衣料品が乏しくなっていく描写をもっと多く描くことができればよかったのではないかと思う。

最後のシーンで、原爆孤児を呉に連れて帰る夫婦が描かれているが、中途半端な感じなため、私的には蛇足感を感じた。原爆孤児を呉に連れ帰る描写より、すずの実家を襲った原爆被害の描写を丹念に描いてほしかった。

最後に、この映画は、戦争を経験したお年寄りより、若い世代の方達に観てほしい。多分、戦争の追体験ができるのではないかと思う。

余談だが、今年の映画は、先の戦争を題材にした映画が多く感じられる。

Akira Doubara