「レトロモダンでビターでカラフル、ファンタスティックな新章!」ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
レトロモダンでビターでカラフル、ファンタスティックな新章!
新作公開にあたり、書き損ねていた1作目を今更ながらレビュー。
最初に白状すると、僕は前シリーズ『ハリー・ポッター』7部作についてはファンではない。
作風の変わった3作目や最終作あたりはかなり好きだが、最初の2作の印象が自分の中で
イマイチだったこともあり、最後まで乗り切れなかった感。なので、この新シリーズ
5部作の企画を聞いた時も「あ、まだやるのね」くらいにしか思っていなかった。
そんな立場の人間と前置きした上で書くが……
『ファンタスティック・ビースト』、めっちゃ面白い!!
『ハリポタ』ですでに世界観やある程度の魔法を説明済みな点がまずプラスに働いていて、
序盤からとにかく出し惜しみ無しでバンバン派手な魔法が繰り出されるのが爽快。
だが決してド派手なだけのファンタジー映画などではなく、
欠点も含めてファニーで魅力的な主人公たち、そして
まさにファンタスティック!な魔法動物たちが織り成す
魔法世界が、徹頭徹尾楽しかったんである。
...
多少長くなるのを覚悟の上で、主要人物4人と魔法動物について書く。
主人公ニュート。
いつも伏し目がちで言葉も少なく、序盤は何を考えているか
あんまり分からないのだが、彼の旅の目的が明らかになる
研究室のシーンで、一気に魅力的なキャラになる。
人と合わせるのは苦手だし、夢中になるとまるで周囲が見えなくなるが、
魔法動物に関する知識、そして彼らを守りたいという情熱は超一級。
最初はろくな会話もできなかった彼が、今回の物語
を通して少しずつ人に心を開いていく様子も素敵。
そして、相棒ジェイコブさん!
前シリーズでは主人公ハリー自身が観客と等身大の目線で
魔法世界を見せてくれたわけだが、今回は風貌も外観もおよそ
ヒーローには見えないジェイコブさんがその役目を負っている。
ニュートと偶然出会ったばかりに大騒動に巻き込まれる彼。
最初はおっかなびっくりだが、ユニークで美しい魔法動物や
クイニーとの出会いは、彼の消したくない想い出になっていく。
最後の別れの雨に涙。忘れられなかった記憶で造った
美味しそうなパンと、クイニーとの"初対面"にほっこり。
ヒロイン・ティナもキュート!
マジメな彼女は常に張り切り過ぎて空回り気味だし、
あまり他人とも積極的に打ち解けられないタイプ。
そしてたぶん、彼女自身もそんな自分を好いていない。
不器用ながらも懸命に優しい正義を貫く姿勢が素敵。
内面は情熱的なニュートに惹かれているのになかなか
気持ちを口にできない姿がいじらしいし、最後に
ちょっとだけぴょんと跳び跳ねるシーンは超可愛い。
その妹クイニーは屈託のない美人さん。
心が読めてしまうので自分が周りからどう思われているかも
知っているけど、元来の性格なのかナチュラルに優しい。
「傷ついた心は読み易いの」と語る彼女はむしろ
普通よりも他人の心に敏感に気を使えるのかも。
見た目で人を選ばず、とにかく根が善人過ぎるジェイコブさん
に惹かれていくあたり、彼女も相当に純粋な善人である。
...
そして、ファンタスティックなビーストたち!
宝石泥棒ニフラーはウルトラキュートな上に笑いも
かっさらうし(ゆっくり宝石をしまうな(笑))、
壮麗なサンダーバードは単なるcreature(怪物)
ではなく、まさにbeautiful creature(美しい創造物)。
他にも出るわ出るわ、フシギでブキミでユニークな魔法動物の数々。
わがまま枝っ子ピケット、伸縮自在の蛇鳥オカミー、可愛い預言者ドゥーガル、
凶悪トリックスター・スウィーピングイーヴルに巨大発光サイ・エルンペント、
紅葉蝶に電球虫に巨大フンコロガシ、テレポートアヒルに風船ライオン!
本物の動物たちのように生き生きと描かれた動物たちで溢れかえった
研究室の場面は、とびきりカラフルで珍しい動物園のみたいで最高に楽しい!
...
そんな魔法動物たちの騒動と共に描かれる、凶悪犯グリンデルバルドの影。
まさかのジョニデ参戦にはビビった(久々の大作出演
だったコリン・ファレルがちょい可哀想だが……)。
これは『ハリポタ』最大の脅威ヴォルデモート誕生に繋がる物語なのか。
抑制不能なオブスキュラスを操る謎の青年クリーデンスを巡るミステリも、
次作への伏線として物語をしっかり牽引。
魔女狩りや子どもへの暴力など『ハリポタ』以上に影のある場面も多く、
より現実的だがロマンチックなキャラも含め、『ハリポタ』を読んで育った大人向けの
ファンタジー映画として、しっかりした見応えの作品に仕上がっていた。
レトロモダンな1920年代ニューヨークとファンタジーな世界観の組合せも絶妙で、
クラシカルでクールな衣装、風光明媚な石造りの都市で繰り出される
大スケールの魔法合戦は実に“画”になる。
...
というわけで、はい、もうメチャクチャ楽しめました。
キャラクターも世界観もエモーショナルな見せ場もしっかり!
特に、隅から隅までしっかり作り込まれた世界観は圧巻です。
史上最大級のファンタジーシリーズと呼ばれるだけのクオリティ。
大満足の4.0判定です。4.5判定でも良いかも。
ニュートと魔法動物たちの次の旅行記が楽しみ。
<了>