「野心ある小品」彼女はパートタイムトラベラー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5野心ある小品

2020年7月11日
PCから投稿

囲み目メイクでないとオーブリープラザにならない。

メイクのことは詳しくないが、ナチュラルな今っぽい囲みでなく、昔の(なのかどうか知らないが)ガッツリの囲みがきまる。

この囲みメイクとオーブリープラザはセットであり、必然的に、役は広くないが、価値は高く、需要もとぎれない。

はっきりした眉、大きな瞳、凸のあるツン鼻、ぷっくりの豊頬と唇。笑うとあどけないのに、上目にすると妖しい。アンニュイもある。それらが囲んでないと一挙にアイデンティティを失う。

囲んでなんぼのオーブリープラザ、と言えるが、囲み目のきまりっぷりは異常。ハッとする美人になる。

分解すると、囲みメイクがきまるのは、徹底的な下三白眼だから──だと思われる。
伏し目でも三白が崩れない。
白目の面積が広大で角膜を動かすたびにギロっとなる。
たとえば遠藤憲一なんかだとギョロだが、こっちはギロ。そのギロに妖しい収攬があり、見つめられたらNOと言えない。目力を眺めているだけで飽きない。

それは制約にもなり、シリアス系への出演はなく、ラブコメやホラーの現代劇がメインだが、出演は目白押し。つまり制約よりも囲み目に需要がある。とみていい。
どの映画でも見事に囲み目。トレードマークとして認知されているなら怖いものはない。

もとはコメディアン。
クリスティンウィグ、サラシルバーマン、エイミーシューマー、メリッサマッカーシーらと同類の経路でハリウッドへたどり着いた。
この路線は順調なキャリアを築くひとが多い。
お客を前にしてしゃべることが、芸能の基調なのは日本も同じである。
お笑い芸人はどの世界でも強い。

演技は達者ではないがシチュエーションのなかで絵になってしまう。美人だが美人扱いされない役回りが似合い、ディスり合いで魅力を発揮。スタイルは確立されている。

予算と肩の力を抜いたコメディだが、ばかばかしさのなかに見捨てることのできない愛らしさとペーソスがある。
恋愛にタイムマシンを絡めSFを消化している。いい脚本。
個人的には感動した。

Paddletonの才人Mark Duplassが、映画に適切なユルさを与している。イケメンだったら凡打だったと思う。

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津次郎