「野心ある小品」彼女はパートタイムトラベラー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
野心ある小品
囲み目メイクでないとオーブリープラザにならない。
メイクのことは詳しくないが、ナチュラルな今っぽい囲みでなく、昔の(なのかどうか知らないが)ガッツリの囲みがきまる。
この囲みメイクとオーブリープラザはセットであり、必然的に、役は広くないが、価値は高く、需要もとぎれない。
はっきりした眉、大きな瞳、凸のあるツン鼻、ぷっくりの豊頬と唇。笑うとあどけないのに、上目にすると妖しい。アンニュイもある。それらが囲んでないと一挙にアイデンティティを失う。
囲んでなんぼのオーブリープラザ、と言えるが、囲み目のきまりっぷりは異常。ハッとする美人になる。
分解すると、囲みメイクがきまるのは、徹底的な下三白眼だから──だと思われる。
伏し目でも三白が崩れない。
白目の面積が広大で角膜を動かすたびにギロっとなる。
たとえば遠藤憲一なんかだとギョロだが、こっちはギロ。そのギロに妖しい収攬があり、見つめられたらNOと言えない。目力を眺めているだけで飽きない。
それは制約にもなり、シリアス系への出演はなく、ラブコメやホラーの現代劇がメインだが、出演は目白押し。つまり制約よりも囲み目に需要がある。とみていい。
どの映画でも見事に囲み目。トレードマークとして認知されているなら怖いものはない。
もとはコメディアン。
クリスティンウィグ、サラシルバーマン、エイミーシューマー、メリッサマッカーシーらと同類の経路でハリウッドへたどり着いた。
この路線は順調なキャリアを築くひとが多い。
お客を前にしてしゃべることが、芸能の基調なのは日本も同じである。
お笑い芸人はどの世界でも強い。
演技は達者ではないがシチュエーションのなかで絵になってしまう。美人だが美人扱いされない役回りが似合い、ディスり合いで魅力を発揮。スタイルは確立されている。
予算と肩の力を抜いたコメディだが、ばかばかしさのなかに見捨てることのできない愛らしさとペーソスがある。
恋愛にタイムマシンを絡めSFを消化している。いい脚本。
個人的には感動した。
Paddletonの才人Mark Duplassが、映画に適切なユルさを与している。イケメンだったら凡打だったと思う。