ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女のレビュー・感想・評価
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その後二人はどうなったのだろうか
オープニング、レコードの回転数が狂ったように乱れていく音楽。まるで映画の世界へと迷い込んでいくよう。白黒の画像も、中東の町っぽい、でも明らかに違う所在不明感を醸し出していて面白い。 この少女は吸血鬼なのだろうか。彼女の行動を見ていると、私にはアラシュが拾った猫の分身のように思える。 そんな彼女がスケートボードに乗って夜の街を徘徊するシーンは何とも独特なユーモアがある。そこから主人公と出会い、その頭に手をかけ喉仏辺りを凝視する際の緊迫感、緩急が何とも心地良い。 最後、一度車から降りた主人公。彼女が父を殺したであろう事を察しながら何を思い車に戻り、二人で町を出ていったのだろう。私には、何かを忘れるためにカセットテープを掛けてアクセルを踏み込んだように見えた。 『ぼくのエリ』と同じ位、その後が気になる。
【”幽幻なる美しきヴァンパイア譚。”悪なるモノの血を吸い孤独に生きる美しきヴァンパイアと同じく孤独な男との関係性を、スタイリッシュなモノクロ映像で描く作品。】
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・美しきヴァンパイア(シェイラ・ヴァンド)は常にチャドルを纏っているので、場所はイランのどこかだろう。
・彼女が、クスリ売りで、娼婦アッティを慰み者にするサイードの血を吸うシーンや、男の子の後を追い、”お前は悪い奴か”と聞き首を振る男の子を逃がしたりするシーンから善悪を血を吸うかどうかの判断基準にしているのかな、と思う。
■作品としては、モロクロームの中での光の使い方や、挿入される音楽の使い方にアナ・リリ・アミルプール監督の映像センスを感じる作品である。
取分け、彼女が孤独な青年アラシュにイヤリングを付けて貰うシーンは美しい。
<美しきヴァンパイアは、アラシュのヤク中の父、ホセインの血を吸い娼婦アッティと、その死体を片付け、彼女はアラシュの車で、当てのない旅に出るのである。
今作の独特なる世界観は屹立しており、印象に残る作品である。>
イランの夜の街を徘徊するヴァンパイア
イランの夜の街を徘徊するヴァンパイアのビジュアルが良すぎる。 ジャームッシュの映像よりコントラストを強くしたようなグッドルッキングと、浮遊感のある話運びと程よいチープさのあるバイオレンスがどストライクに好み。 スタイリッシュジャンルものでミニシアター系〜これは好き。 イライジャのスペクタービジョン制作の映画はやっぱり良い意味で安っぽさがあるけど、作家性もある感じ。 今年観た「聖地には蜘蛛が巣を張る」も同様にイランが舞台で娼婦が出てくる話。ジャンルもテイストも全然違うけど、今まであまり観てこなかったイラン系の映画が観れるようになったのが面白い。 聖地には〜は、実際に起こった事件を元にイランの現在の闇を描いていて、ザ ・ヴァンパイア非現実的な女性が架空の街の闇からイランを眺めていてそこに少しのロマンスがある。どちらも物語の真ん中にいるのは女性達。 モナリザ〜の公開もあるしこれからアナ・リリ・アミリプール監督のこれからが楽しみ。
カルト映画に認定!?
リンチの「イレイザーヘッド」にジャームッシュの雰囲気も醸し出しながら難解にもタダのお洒落映画にもならずバランスが取れている。 決まった構図に写真の様な映像に死体の山を素通りでのオープニングにはテンションが上がる。 乾いた映像にD・リンチよりはオドロオドロしく無くPOPでセリフも説明臭くならず音楽も斬新。 猫が美人さんで和めるし萌える。
アート寄りと娯楽の好バランス
語るに語れない一本。 評価するのは観手の感性のみ、説明なんてないし。 ただ、監督の感性は凄いなと伝わってきた。 確かにジム・ジャームッシュ風なところはあるが、不条理の中にもある筋を通しているのは小気味よかった。 音ビックリを使いすぎなのと、無駄に爆音なのは若さかもしれないけれどもね。 主演の男女が魅力的、故にかの余韻が素晴らしかった作品。
邦題のミスリードで評価の低い本作を全力で擁護させて頂きます!
邦題やプロモーションのミスリードが、映画の評価を著しく下げることが多々あって、本当に悲しくなります。 本作のように、切実なテーマがある映画は特に。 今までで一番むかついたキャッチが、『シェイム/SHAME』の"愛なら毎晩ティッシュにくるんで捨てている"ですが、本作はその次くらいにむかつく邦題です。 配給会社のギャガ・プラスさんは、何を思って本作を配給したんだろうか。 イライジャ・ウッド制作総指揮だから? 韓国でソ・ジソプが配給権を獲得したから? 本作の監督アナ・リリー・アマポアーの次回作の主演が、キアヌ・リーヴス、ジム・キャリーだから? 映像がジム・ジャームッシュ的なモノクロで、お洒落っぽいから? なんとなく、次きそうな感じだから(笑)? 因みに主演の少女には牙が生えてますが、ヴァンパイアとは言及されていません。 首筋に噛み付いて相手を殺しますが、指も食いちぎります。 噛まれた相手はヴァンパイアにならないし、鏡にも映ります。 汚れた血(ドラック漬け)を襲っても、平気。 少女が襲うのは、全て悪い男です。 そしてなにより、十字架は出てきません。 牙が生えた少女の格好は、所謂ヴァンパイア的なマントに見えますが、同時にイラン女性が身にまとう"チャードル(体全体を覆う黒い服装)"であることが分かります。 監督は、イラン系アメリカ人の女性。 本作の舞台はイランの架空都市"バッドシティ"です。 原題「A Girl Walks Home Alone at Night」の意味は、"少女が一人で夜中に我が家を目指す"でしょうか? イランでは夜間の女性の外出は、禁止だったように思います。 また本作では猫が色んな場所で登場しますが、イランでは猫は外に出してはいけないようです。 少女は家の中では80年代のアメリカのポップスを聞き、カットソーにジーンズでダンスしています。 マドンナのポスターが、意図的に何度も画面にアップになる(マドンナ風ですが、監督が変装してるようです)。 イランでは、西洋の音楽は禁止です。 この点については、イラン出身のバフマン・ゴバディ監督の"ペルシャ猫を誰も知らない"をご覧になると分かると思います。 さて、本作の少女が向かう原題の"Home"が、単なる家でないことはもうお分かりだと思います。 "Home"は全てのイラン女性が目指しているものなんでしょう。 でもタイトルに"ヴァンパイア"とついているせいで、ネット上の評価は散々です。 映画の評価は観る方の知識や経験、そしてなによりその時の精神状態で大きく左右されると思います。 今の私には「分かるよね?」と、まるで縋ってくるような映画でした。 私の"我が家"も遠い。 熊本ではDenkikanさんで、1週間の限定公開でした。 見終わると隣の隣に座っていたロマンスグレイなおじ様が、「傑作だったね」と仰いました。 私は傑作って言葉は好きじゃないなぁ、と思いつつ、やっぱりそんなおじ様がいるDenkikanさんが好きだ-!と思いました(笑) 上映館がかなーり少ないですが、もしお近くであれば是非! ※本年観た映画の中では、上位にくるくいらい好き。
凡庸極まりない邦題が残念。全編ペルシャ語で綴られるホラーというホラーというジャンルに囚われない奔放な作品
この凡庸極まりない邦題からは全く想像がつかない、ホラーというジャンルには収まりきらない独特な雰囲気を持った小品。ヤク中の父の面倒を見ながら暮らす孤独な青年アラシュが深夜に出会った風変わりな女の子と絶妙に不器用な仕草で少しずつ心を通わせていく様を淡々と見つめる映画。全編ペルシャ語で綴られる陰影の深いモノクロ作品で、作品中に使われる楽曲のチョイスまでもが個性的でいつまでも余韻を味わっていたくなる、ジム・ジャームッシュやクエンティン・タランティーノの初期作品群のように個性的な愛おしい作品でした。 しかし、小生の生涯ベストワン映画である『ぼくのエリ』もそうですが、吸血鬼モノの邦題ネーミングセンスが今ものすごく危うい気がしてしょうがないです。邦題もまた映画史に残るものだということを認識して慎重に選んでもらいたいものです。
独特な世界観ではあるけれど。
映像も音楽もスタイリッシュだけどお話はよく出来ているようないないような。なんか微妙なバランスでした。 モノクロームの映像とイランの架空の街という設定は孤独なヴァンパイア少女と青年の出会いと関係を描くには最高のシチュエーションだった、かな。 スケボーのシーンとか印象的。
『エイリアン』みたい
見た目がではなく、なかなか正体を出さない様子が『エイリアン』みたい。
怖い。ホラー的な怖さではない。
白黒画が美しい。
音楽もイケメン。
カルフォルニア州で撮ったの、気づかなかった。
クラシックカーもいい!
カッコイイ映画!!
微妙かな
アナログの映像に終始お洒落に音楽が流れるのは好印象。仮想の都市「バッドシティー」で主人公が乗るレトロなスポーツカーも印象的です。残忍なヴァンパイアと違い闇雲に殺さず意味がある点も悲しさを感じます。ただ、肩すかしの結末はね〜っ。
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