「冷戦時代の雰囲気をうまく演出」ブリッジ・オブ・スパイ てんてんいいこさんの映画レビュー(感想・評価)
冷戦時代の雰囲気をうまく演出
アメリカで見ました。冷戦時代の米露の雰囲気を見事に再現していると思います。
映画はまずニューヨークでスパイ活動をしているソビエト側のアベルという人間が逮捕されるところから始まります。ブルックリンを舞台にしていて、ブルックリンに古い車や昔の服を着たエキストラを配置して1960年代の雰囲気を演出。地下鉄については今でもクソ古いので、特に演出をせずとも古い雰囲気が出てました笑
さて、逮捕されたところから、トムハンクスが演じる弁護士が登場。利益にならないのに、被告人には平等に弁護を受ける権利があるとの考えのもとで、アベルの弁護を引き受けます。しかし、これにより家族に対する嫌がらせが起きます。弁護士であると共に家族人でもあるドノバンの苦悩したことでしょう。しかし、ここらへんの苦悩はややあっさり演出されていました。物語の中心は交渉にありますし、個人的には家族愛押し付けが多いアメリカ映画の中では割とあっさりしていて良かったように思います。
さて、アベルの裁判はとても手続保障なんてないひどいものでした。ここらへんの議論は割と憲法とか、それなりにアメリカの司法手続に関する議論が出てくるので、予備知識があるとより議論を楽しめるかと思います。
裁判終了後、アメリカ側のスパイがソ連に捕獲され、ドノバンがその人質の交換の役割を担います。ここから舞台はドイツに移りますが、当時のベルリンの壁建設時の異様な雰囲気、共産主義国独特の雰囲気をよく演出できていたと思います。
交渉は、特にひねったものはなかったですが、調べたら史実通りだったんですね。アベルが橋でドノバンのために、すぐに向こう岸に渡らなかったところは本作品のクライマックスです。
総じて良作でした。やや感情描写が弱いかなと思いますが、万人におすすめできます。