「女性目線が苦手なのは監督か観客か?」山河ノスタルジア よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
女性目線が苦手なのは監督か観客か?
併映の「プラットフォーム」と同様、チャオ・タオのダンスの上手さが印象に残る。もともとダンサーをやっていたのだろうか。ジャ・ジャンクー監督の映画に出る前は、地方のドサ周りの踊り子だったりしたら、この人の人生そのものがジャ・ジャンクー映画ではないか。
映画としてはチャオ・タオのダンスの他に見どころのないものだった。
「世界」もそうだったが、彼のお気に入りのチャオ・タオに焦点があてられた作品よりも、男性が主人公の作品にこそジャ・ジャンクー映画の味わいがある。
この女優を主役に作品を作りたいのは分かるが、この監督は女性の視点で映画を撮ることが苦手なのではなかろうか。
この作品においてもそのことが前半の恋と結婚の物語に現れている。本来であれば、本当に好きな男とは結婚しないで、経済力と積極的な性格を持ったジンシェンを選んだタオの逡巡や決意が前半の主題となるはずである。それなのに、映画はジンシェンがタオを口説いているときの嫉妬、結婚してからの虚しさこそが主題となっている。
前作、「罪のてざわり」についても同様に思う。チャオ・タオが主役のエピソードでは、キレる彼女よりも、そんな彼女を翻弄する男の側のどうしようもない閉塞感に共感してしまう。
果たして、ジャ・ジャンクーにとって女性目線の映画を撮ることが難しいのか、それとも私に女性目線で描かれた映画に対するリテラシーが欠けているのか。
このようなテーマで、もうしばらくジャ・ジャンクーの映画との付き合いが続きそうである。
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