「「上の句」は、特に挫折感から立ち直りたい時に見たい作品!」ちはやふる 上の句 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
「上の句」は、特に挫折感から立ち直りたい時に見たい作品!
本作は、脚本、演出、演技、音楽、映像手法など、どれをとっても一級の作品です。
映画「ちはやふる」は、「上の句」と「下の句」の前後編という形で2016年3月19日、4月29日と連続公開されました。
“連続公開”というのは、前編がコケると後編が目が当てられなくなったりするものなのでリスクが高いのですが、本作は、原作のマンガの出来も良いようで、高校1年の始まりから終わりまでを丁寧に追いかけた「青春スポーツ恋愛映画」の金字塔のような出来上がりになっています。
例えば2002年の「ピンポン」という作品が、それまで地味なイメージだった「卓球」を、如何にダイナミックな競技であるかを示すことに成功しました。まさにそれと同様に、「ちはやふる」では、地味なイメージのある「百人一首」という1000年前からある伝統に、「競技かるた」というものがあることを伝え、それがダイナミックなスポーツのようなものであることを示すことに成功しています。
さて、本シリーズも「帝一の國」などと同様に、映画単独初主演となった広瀬すず以外は(公開時は)メインの野村周平も真剣佑も「誰?」状態で、他もほとんど知られていない役者だったので、どうなるのか心配でしたが、さすがは小泉徳宏監督作だけあってキャストの演技も全員が光っていて、本作で彼らの「代表作」ができブレイクしていくのは予想できるほどでした。
「上の句」の見どころはいろいろとありますが、強いてあげると、後半の影の主役の「机くん」(森永悠希)の挫折と、チームワークの重要性が分かるシーンでしょうか。
机くんの「やんなきゃ良かったよ、〇〇なんて。前みたいに一人でいれば、こんな気持ちにならなかったのに…。僕には〇〇の才能がないんだよ。きっとこの先も役になんかたてない」
といった心境は、多くの人たちが日常で抱える挫折や、現実から逃げたい気持ちを代弁していると思います。
それに対しての部長の太一(野村周平)の言葉には、いろんな現実の壁を乗り越えるヒントが詰まったセリフとなっています。
「上の句」では、野球で言えば、甲子園に行けるところまでを描いています。
また、サントラのメイン楽曲の横山克の「つながれ つながれ! つながれ!!」は作品の格式を2段くらい上げるくらいの名曲ですし、エンディング曲のPerfumeの「FLASH」も作風にフィットしていると思います。
「上の句」は興行収入16億3000万円というヒットを記録し成功しましたが、欲を言えば、これだけの名作なので20億円には行ってほしかったのが正直な感想です。