「男性諸君! チュリトス持ったJKに囲まれる可能性大ですが、勇気を出して観に行ってきて!」ちはやふる 上の句 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
男性諸君! チュリトス持ったJKに囲まれる可能性大ですが、勇気を出して観に行ってきて!
末次由紀せんせ原作「ちはやふる」の、実写映画化だそうです。
原作は大変人気で、累計発行部数1400万部を突破しているとか。
全く未読です。すみません!
綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の3人は幼なじみで、いつもカルタで遊んでました。
で、千早は新から、競技カルタで世界制覇!な夢を語られ、きゅんとしてしまいます。
そして千早も、新と同じ夢を追いかけはじめる。
それが恋心なのか、尊敬なのか、"上の句"でははっきりしません。でも、とにかく特別な感情を持っている。
しかし、新は東京から福井県に引っ越してしまう!
新の気持ちは"上の句"では語られないけれど、太一が競技カルタに打ち込むモチベーションは「千早に好きになって貰いたい」であり、この3人の恋愛模様と、まるで格闘技並の激しい競技カルタの世界が描かれます。
※上の句、下の句と2部作のようですよ。
本作のタイトルは、みなさまお察しの通りです。
"千早ふる
神代もきかず
龍田川
からくれなゐに
水くくるとは"
からきています。
この和歌は、在原業平朝臣が読んだ歌で、意訳すると(諸説あるようですが)、龍田川は隠喩で、在原本人のこと。
つまり、「色んな不思議なことが起こったと言われる神の時代でも聞いたことがないぜ、この龍田川が真っ赤に染まったなんて=つまり今まで経験したことない恋に、在原は身を焦がして真っ赤に燃えている」ということです。
ええ、恋の歌です。
百人一首の中でも、色鮮やかな歌ですよね。
在原が贈った相手は、原長良の娘の高子さんでした。高子さん、実は清和天皇の側室。
なんという禁断の恋!
千早は「いち=すごい勢いで」「はや=素早く」「ふる=ふるまう」という言葉を縮めたもののようです。
安倍晴明さんは、「一番身近な呪は名前。人は名前に縛られる」と仰いましたが、本作の主人公である千早は、かなり勢いのあるキャラとして描かれています。
例えば競技カルタの試合が終わった途端、まるで死んだようにストンと眠ってしまうとか。
本作に好感が持てるのは、いちいち登場人物達が"千と千尋の神隠し"以降のジブリ作品のように(全力ですみません)、やたらと自分の心情を吐露しないことです。
登場人物達の心は、カルタが代弁してくれるのです。
とても趣がある、作品だと思いました。
最近の邦画は、てか若者向けのラブストーリーは、直接的な表現を多用し過ぎてて、おばちゃん萌えないんですよー。あ、ターゲットにされてなのは、承知しています!
壁ドンで、「好きっていいなよ」とか。
それはそれでいいですけど、分かる人に分かって貰える言葉があってもいいなぁと。
百人一首なら、こうきますよ。
"玉の緒よ
絶えなば絶えね
ながらへば
忍ぶることの
弱りもぞする"
玉の緒=これはネックレスのようなものですね。この歌では自分の命の隠喩的表現になっています。
意訳すると「もう死んじゃいたい。だってもう、あの人への思いを隠しておくことができないんだもの!耐えるの限界なんだもん!だから死ぬ!」
萌え(あ、本作には登場しない歌です)!
日本はそもそも、高度なコミュニケーションスキルを要する国だったのですよねー。
でも百人一首を知らなくても大丈夫ですよ。
肝になる歌は、ストーリーの中で自然に説明してくれますから。
本作では言葉の表面を舐めるだけではなく、読み解く楽しさを思い出させてくれます。
そして、注目して頂きたいのは、言葉の"ワープ力"ですね。
在原の歌で、龍田川が赤く染まるのを想像し、そこから在原の恋心に思いを馳せる。そこから、登場人物達の心に繋がる。
"言葉の持つ力"を描いてる点で、私の中で高評価となりました。
あとは、実は激しい競技カルタの世界!
素振りってするんだー(笑)!初めて知って、衝撃を受けました。
カルタの取り方も、カンフーみたいな秘技的なものがある。びっくりです!
千早のことをを好きな、イケメン、金持ち、成績優秀、スポーツ万能だけど、いちばん負けたくないカルタで勝てない太一の劣等感と、(ネタバレになってしまうので言いませんが)罪悪感。ラストで一歩踏み出して、自分の殻の裂け目を見せる太一。おばちゃん感動したよ!
最近はスーパーヒーローでさえぐじぐじ悩む時代なので、すかっとした男子に安心しました。
きっと映画界で「ぐじぐじ言わない行動のみ!」の登場人物って、"キャプテン・アメリカ"と、本作の太一くんだけだと思う(笑)
久々、ぐっとくる男子でした。
また脇に、私を激しく困惑させた"舞妓はレディ"の上白石萌音ちゃん。
本作では呉服屋の娘で、和服、和歌オタクを演じています。その存在感は、すずちゃんを越えています。
なんでしょうか、この大物感!
注目していきます。
本作はいかにもな少女漫画の実写化!なプロモーションで、勿体ないです!
あと、むりやり眩しい青春(恋愛)ドラマにし過ぎかも。でも珍しく、すかっとした男子目線の、胸アツ映画でしたよ。
なので、男性諸君!
チュリトス持ったJKに囲まれる可能性大ですが、勇気を出して観に行ってきて。