「衝撃のラスト?先の読めない展開」ヒメアノ~ル といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃のラスト?先の読めない展開
映画の予告編を観て「面白そう」と感じたため鑑賞いたしました。
漫画が原作らしいですが、原作は未読。全くの事前知識なしでの鑑賞です。
結論。何だこれは!?
映画の前半と後半とでテイストが全く違う。前半の甘酸っぱい展開が嘘のように後半繰り広げられるサスペンス&バイオレンス。カメ止めの「この映画は二度始まる」というキャッチコピーを思い出しました。この「ヒメアノ~ル」も、二度始まる系の映画です。ストーリーも面白いですが何より役者陣の演技が素晴らしい。主人公の濱田岳、先輩役のムロツヨシ、そしてなによりV6の森田剛。それ以外の配役もピッタリはまっていて、めちゃくちゃ素晴らしかったです。
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ビル清掃のバイトをしていた岡田(濱田岳)は、職場の変わり者の先輩である安藤(ムロツヨシ)が好意を寄せるユカ(佐津川愛美)との仲介役を頼まれる。ある日岡田と安藤がユカの働く喫茶店に行った際、岡田の高校時代の同級生である森田(森田剛)とバッタリ再会して、少し会話をした。その様子を見ていたユカが後から岡田に「実は森田にストーキングされている」と相談をし、岡田は森田を調査することになった。相談を受けているうちに岡田とユカは親密になり、安藤に内緒で付き合うことに……。
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物語の前半、まるで青春恋愛映画のような、観ていてこっちが恥ずかしくなるような展開が続きます。彼女ができたことのない冴えない男である岡田が、先輩に内緒でとびきり可愛いくて若い女の子と付き合うことなる展開。ありきたりなストーリーではありますが、ラブコメとして観ていても普通に面白い。しかしながらユカに対して異常な執着を見せる安藤や、ユカのストーカーをしているらしいかつての同級生の森田の存在が、ただのラブコメではないと感じさせてくれます。
そして映画中盤、今までストーカーの森田を「追う側」だった岡田が、明確に「追われる側」になった瞬間にタイトルが出てくる演出。そして画面右下に「R15+」の文字。今まで観ていたラブコメは前座で、ここから地獄が始まるぞというワクワク感。タイトルの演出で、ここまでワクワクしたのは久しぶりです。
先にも述べましたが、とにかく役者陣の配役や演技が素晴らしかったですね。濱田岳さんの童貞感、ムロツヨシさんのコミュ障感、森田剛さんの滲み出るやばさ、佐津川愛美さんの清楚系ビッチ感。役者陣全員が「っぽい」人選ですし、与えられた役を100%演じきっているように見えました。
私は濱田岳さんの童貞感溢れる演技が非常にたまらないのです。女の子の部屋に上がったのに手が出せず結局女の子の先導で行為に及ぶ感じとか、女の子のボディタッチとかあざとい仕草に思わずにやけてしまう感じとか。自分も冴えない男として「わかるわ~」とか思いながら観ていました。
ムロツヨシさんは最近は福田監督作品みたいなギャグばっかりやってる印象ですけど、こういう何しでかすか分からないヤバさを持ったキャラクターを演じるのも素晴らしく上手いですね。
佐津川さんの一見清楚に見えるけど男性経験は豊富って感じも素晴らしかった。冒頭から男が喜ぶ女の子の仕草を知り尽くしたような絶妙な演技をするんですよ。後に「見た目は清楚だけど男性経験は豊富」っていうのが会話で明かされますが、その前に彼女の仕草からそれがしっかり伝わってくる。これは本当に凄い。
そして何より凄まじかったのは、V6の森田剛。私実は森田さんがここまで演技ができる方だと知りませんでした。濱田岳さんと森田剛さんの二人で居酒屋で飲むシーンを見た瞬間に「森田剛凄い」と実感しました。会話の語り口や表情から滲み出る「狂気性」は、普通に話しているだけなのに首元にナイフを突きつけられているかのような感覚に陥ります。かなり難しい役どころだと思いますが、そんな難しさを感じさせないほどの圧倒的な演技でした。最高です。
残虐なシーンが多い映画ですが、ラストのシーンでは胸を締め付けられるような、涙腺が刺激されるような感覚に襲われます。「善悪とは何だったのか」「果たして森田を悪人と断ずることができるのか」「彼もまた被害者なのではないか」という感覚になりました。単なる「バイオレンス映画」とカテゴリしてはいけないような、奥深いストーリーです。素晴らしかったです。