「どんな人生にもきっとある、「あの頃」のこと」ヒメアノ~ル hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな人生にもきっとある、「あの頃」のこと
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号泣した。
号泣すると思ってなかったから、びっくりした。
映画を見て数時間後、去年自殺した弟のことを思い出した。
最後の数年間、傍から見ても、彼の人生は“詰んで”いた。
働いては辞め、借金を作り、毎月のように家族に金を借りていた。
何度も自殺未遂を繰り返した。そして死んだ。
弟の口調はいつも軽かった。
野球や競馬の話と同じトーンで、他人事みたいに
「俺の人生終わってるやん?生きててもしょうがないやん?」
みたいなことを言った。
真面目な話をしても、全く届いている感じがしなかった。
森田剛演じる森田の話し方が、その弟とダブった。
表面的な受け答えの軽さ。
全てを諦め、全てに絶望している。
何を言われても心が動かないように、がっちりとガードを固めている。
その森田が、最後の最後に思い出した、あの頃の記憶。
たぶん、激痛を緩和させるために脳内から快楽物質が出たんだろう。
人に心を開いていた、未来に希望を持っていた、あの頃。
それは純粋で明るくて美しいけど、もうどうやったって戻れない。
弟はきっと、何かに傷ついたり失敗したりしながら
少しずつ世の中と自分自身に絶望していったんじゃないかと思う。
そんな中でも、何かに喜んだり、誰かを好きになったりもしたんだろう。
折にふれて思い出すような、美しい思い出もあっただろう。
森田の人生は森田のもので、弟の人生は弟のものだ。
森田がああなった責任が岡田にあるとは思わないし、
私に弟の人生を変える力があったとも思わない。
だけどせめて、一緒にテレビゲームをしたり、くだらない話をした、
私にとって「幸せ」と呼んでもいいような子供の頃の日常のことは
なるべく覚えていようと思った。
弟のためでなく、私のために。
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