「森田剛にしか出来ない役」ヒメアノ~ル なかむらさんの映画レビュー(感想・評価)
森田剛にしか出来ない役
原作未読ですが、森田剛に惹かれ友人と観に行きました。
見終わったあと何故だか涙が溢れました。
恐怖、感動とは違った、「虚しい」「やるせない」そんな感情が残ってしまう映画だと思います。
バイト先の先輩安藤さん(ムロツヨシ)はユカちゃん(佐津川愛美)を「運命の人」と信じて疑わずに、岡田くん(濱田岳)を振り回す様はただの気持ち悪い先輩という感じでしたが、岡田くんのことをユカちゃんが好きと知った時の悲鳴、からのチェンソー発言は「唖然とするキモさ」があります。しかも、全て棒読みの演技なのでより気持ち悪く感じました。
安藤さんを気にしつつ、ユカちゃん岡田くんは付き合い始めるあの甘酸っぱさは個人的にはとても好きです。2人しか知らない関係、だからこそ楽しそうに恋愛をしているのだと思います。
前半は恋愛、笑いが多く含まれていて落ち着いて見れました。(暴力シーンも目を瞑る程ではないかと)
しかし、「HIMEANOLE」とローマ字でタイトルが出てくる所からがこの作品の本当の始まりです。
岡田くんとユカちゃんの日常に淡々と森田(森田剛)の影が出てきます。
金を集っていた旧友(と婚約者)を自分の家と共に焼いたので、金も無ければ家もない。ただ罪を犯しながら街をふらつく、その時の街の様子、森田のやり方が当たり前の様に感じシワを寄せる描写も多くありました。
ナプキンを普通につかみ投げたり、人を犯し殺した後に普通にご飯を食べたり、人間味がなくゾッとしました。
それ程彼にとって殺人とは日常なのだと思いました。
原作だと森田は岡田くんに近づけない(?)と表記されていましたが、映画では森田は岡田を捕まえます。
警察にばれ、逃走中の車内、怪我を負いながらも岡田くんは森田に話しかけます。それでも森田は車を止めませんが車の前に犬を散歩させている老人が現れるとハンドルを回し電柱に当たります。
そこから、森田は学生の頃の記憶(虐められる前)と今がごちゃごちゃになります。
そして学生の頃の2人の映像に移ります。
新しい制服にまだ不慣れな会話、実家の縁側と麦茶、庭には愛犬、そして楽しそうにゲームをする2人の姿。
もう抵抗する気もない森田が警官に捕まりながら岡田くんに向けて「また家に遊びにおいでよ」と笑いかけます。
ちょっと戸惑いながらも岡田くんは頷きます。
そこでエンドロールが流れヒメアノ〜ルは完結です。(すみません。過去と捕まる時が前後しているかもしれません。)
パンフレットで森田剛は「最後のシーンが無ければ受けなかった」と言っていました。
原作ではあっさり捕まってしまうらしい森田を、岡田くんに接触させまた笑顔にした監督。憶測ですが監督は森田を人間にしたかったのではと思います。
過去に酷い虐めを受けて、その主犯を殺した時に自分の性癖に気づいた森田。私は森田を凄く純粋で可哀想だと思います。
サイコキラーでバイオレンスな彼ですが、森田もまた弱者なのです。
重箱の隅をつつくようですが、森田は本当にユカちゃんに好意があったと思います。
どんな手を使ってもどんな方法でも人を殺す森田が、ユカちゃんに見つかったとき直ぐにユカちゃんを刺さなかったのは殺人目的以外の感情があったのではないでしょうか
そう考えると森田にも普通の感情はあったのだと思えて哀しくなります。
ただの快楽殺人鬼なら良かったものの、最後の彼の笑顔は視聴者にとって救いか絶望か、
もう1度みたいと、思える様な簡単な作品ではありませんでした。
ジャニーズと言う壁を越え、ここまでするのかという描写が多くありましたが、森田は森田剛でしか出来なかったと思います。
ただ、ファンであったり予備知識のないまま見るとショックが大きいかもしれません。
V6のヤンチャな森田剛はスクリーンには居ません。