劇場公開日 2017年2月24日

「栄光の復興となるか?」ラ・ラ・ランド nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0栄光の復興となるか?

2017年5月19日
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鑑賞方法:映画館

俳優については簡単に。エマ・ストーンはアメスパでは可愛らしいという印象だったが、本作では大人の女性らしさが伺えて、アメスパのエマが好きだった私は少々がっかり(笑)一方、ライアン・ゴズリングは相変わらず、クールでカッコいいったらありゃしない。沈黙の演技でここまで魅せられる俳優がいるだろうか?『ドライヴ』のレビューでも書いたが、彼の作品を観終わると、彼になりきってクールに振舞っている見苦しい自分に気づくのである。

さて、この映画の素晴らしさは「ミュージカルのダンスシーン」「メッセージ力」この2つだと考えている。
ダンスシーンは、皆さんお気づきの通り長回しによる一発撮りなのだ。これによって、演者達の良い意味での緊張感、そして臨場感がヒシヒシと伝わってくる。たった3分もないシーンの撮影計画, 練習量は想像もつかない。

そして監督のメッセージ力が物凄い。それは、「ジャズ/ミュージカルの復刻」である。どちらも50年代に最盛期を迎えた(JazzではCount Basie, Miles Davisなど、ミュージカルでは『雨に唄えば』『バンド・ワゴン』『巴里のアメリカ人』などである。これらの映画の影響を露骨に受けていることは、本編を観れば明らかにわかる。)が、現在ではEDM, アメコミに取って代わられ、衰退の一途を辿っている。セブは"but, is dying"と言い、その危機感を観客に訴えるが、果たしてエレクトロやコミックに染まった現代人に対してどれだけ切に伝わっただろうか?これはセブだけではなく、チャゼル監督の意志でもあるのだ。チャゼル監督の前作『セッション』でも、主人公は死にゆくジャズに対して不安を抱いていた。

表向きには、楽しくも切ないラブストーリーだ。だがこれは、ジャズ・ミュージカルといった死にゆく過去の大衆文化の素晴らしさを伝えるとともに、チャゼル監督が現代人に向けて警鐘を鳴らした作品なのだ。

『セッション』『ララランド』これらは文化の移ろう現代、そして未来へ向けてのメッセージを込めた連作だ。果たして、ここからBack to the 50'sの流れを生み出すことができるか。

nagi