「最高の現代ミュージカル映画」ラ・ラ・ランド 10risugariさんの映画レビュー(感想・評価)
最高の現代ミュージカル映画
私自身あまりミュージカルが得意な方ではない。あまり好き好んで見ないジャンルなのだが、見て全く後悔していない。私の好きなミュージカル映画の中で一番新しい作品がレ・ミゼラブルである。あの映画が何故好きになれたかというと、全編にわたり歌のみなのだ。台詞と歌がゴチャゴチャする事なく、ドラマから歌への移行時に発生する違和感が出てこなかったからである。では、ララランドはどうなのかというと、台詞と歌が綺麗に繋がっているのだ。ついさっきまで普通に会話ができていた人物が、突然歌い出す事に対する違和感が全く湧かないのだ。感情の爆発としての表現である歌が、なんの違和感もなく心に入ってくる。歌とドラマの切り替えという雑音が入らず、その爆発が心に入ってくるので、とてつもなく感情を揺さぶられる。人生で初めて、映画館で頭をリズムに合わせて振ってしまった。また、2人の俳優が実にイイ。主演のライアン・ゴズリングさんは、ピアノの経験は殆どなく、3ヶ月前から始めて、1日4時間の練習を欠かさなかったそうだ。その成果が惜しみなく発揮されており、ピアノを弾くその姿には思わず惚れてしまう。ヒロインのエマ・ストーンさんの第一印象として、目力が凄い。目が大き過ぎて日本人の顔が見慣れている私にとって、苦手な顔のつくりだった。だが、そんなことは直ぐにどうにでも良くなる。彼女の演技の節々に茶目っ気が溢れており、可愛げがある。私の中でドンドン愛すべきヒロインとなっていった。終始良質な音楽に包まれながら、2人の淡い恋が進んでいくこの映画は、現代のミュージカル映画の傑作として相応しく、アカデミー賞6部門を受賞するに値すると、素人の私が見ても思う。また、映画館で観る価値のある映画だろう。映画という名目で資金を掻き集め、通常ドラマの2時間特番を金掛けて作ったような映画とは話が違う。あの大スクリーンで、あの音響で観る事に意味があるのだ。また、スクリーンの話をすると、最初に「シネマスコープ」と表示される。これは縦1に対して横2.25倍のワイドスクリーン方式で 、ハリウッド黄金時代のミュージカル大作に使われ、ミュージカル衰退と共に廃れていったスクリーン方式なのだが、それを最初に打ち出すあたりの監督の宣言は実に心が踊った。私の中で注目ポイントは2つ。1つ目は、始めってからタイトルが出るまでの間。2つ目は、最後の最後、2人の表情。始めと終わりに詰められている、見所を見逃さず、是非ミュージカルの世界に飛び込んで頂きたい。貴方も帰りながら車の中でサントラを流しているはず。