劇場公開日 2017年2月24日

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「「夢を見る=映画を観る」ということ」ラ・ラ・ランド pippo9さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「夢を見る=映画を観る」ということ

2017年3月1日
iPhoneアプリから投稿

ミュージカル映画は苦手ながら話題作ということもあり鑑賞しました。
夢を追う2人の若い男女のラブストーリー、と聞くと単純なストーリーの様な感じもしますが、その中にも「夢を見る=映画を観る」という、映画を観ている我々観客にも直結した「映画論」を描いているようにも考えられました。

映画の撮影手法や衣装も主人公の感情に対応する様に変化し、主人公が夢を見る時は、映画的にロマンチックに演出されていき(主に冬春夏のシーン)、主人公が現実的になっていくに応じて演出もリアリティ重視になっていきます(主に秋のシーン)。

つまり、主人公2人が現実とは違う夢の世界に憧れ、その世界に入ろうとすることは、我々が映画の世界に憧れて、映画を観るという行為と同じである、ということを伝えようとしているのかな、と思いました。

2度目の冬のシーン、主人公2人が再び出会う場面、「もしかしたら存在したかもしれない夢の様な未来」の映像が2人の間に流れるも、それもまた我々が映画を観ることと同様、2人が抱いていた夢でしかなかったのです。そして、この映画がもうじき終わることと同様に、この夢もまた終わりを迎えるのです。

「映画を観るという行為とは」という映画論的なメッセージこそがアカデミー賞最有力候補になった部分かなと考えましたが、「昔の映画をリスペクトしてますよ」的なコンクール受けしそうな作りが若干鼻につく感じもしなくもなかったです…。
昔のミュージカル映画テイストと映画論を取り入れることで映画コンクールで評価されやすく、なおかつ大衆向けのエンターテイメント性にも秀でている、良い意味で「あざとい」作りになっている映画だなと感じました。

ただ、そんなことは考えなくても、歌も凄いし笑いどころもあるし、素直に楽しめる映画でした。
技術的な部分は現状のハリウッド最高水準だと思います。

主人公がわりと簡単に成功してしまうところは、この映画の監督自身のキャリアと重なるなぁとも思ってしまいました笑

pippo9