「映画と音楽と夢とエマ・ストーンの、魔法のセッション」ラ・ラ・ランド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
映画と音楽と夢とエマ・ストーンの、魔法のセッション
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
…と、書き出そうと思ってたのに、前代未聞の手違いで作品賞は「ムーンライト」。あんなミスあるんだ…(・・;)
とは言え、監督賞・主演女優賞など計6部門受賞。
今年のオスカーの主役だった事は間違いない。
作品賞には相応しいし、受賞して何の不思議も無い。
それくらい、映画を見る楽しさ、幸せ、喜びに溢れていた。
話題作だから随分持ち上げられてると鼻に付くように感じる方も居るだろうが、見れば納得。
とことん、素敵なのだ。
話題のオープニングには圧倒され、いきなり引き込まれる。
ユニークなのは、雰囲気は昔を感じさせるが、舞台はれっきとした現代。
自分は往年のハリウッド・ミュージカルは結構見ているものの、そんなに詳しいってほどではないが、それでもあの時代のミュージカルを確かに彷彿させるのは分かる。
懐かしさと新しさが見事に融合。
話についてはちと突っ込まれてるようだが、その通り、シンプル、定番、ありきたり。
夢を追いかけ、夢の街で出会った、女優の卵と売れないジャズ・ピアニスト。お互い励まし合い、惹かれ…。
「ズートピア」でも描かれた夢と現実は誰もが共感する設定。
斬新な話には勿論舌を巻くが、映画の話はシンプルでいいのだ。
それをどう魅せる事が出来るか。
本作の場合、映画の総合芸術が素晴らしいまでに盛り上げる。
オープニングの巧みなカメラワーク、ファンタスティックでノスタルジックでロマンチックな映像や美術、カラフルな衣装。
そして何より、音楽。
時に胸踊らせ、時に心に染み入り…。
映画における音楽の存在を改めて再認識した。
スコアでは二人の出会いと思い出のピアノ・ソロ、歌曲はオスカー受賞&ノミネートの2曲は勿論、挙げたらキリが無い。劇場を出ても暫く、頭の中を数々の音楽が奏で続くだろう。
それらをまとめ、オリジナルのミュージカルを作り上げたディミアン・チャゼル。
「セッション」で衝撃を受けたが、32歳の若さでの更なる飛躍もまた衝撃。
若くて、才能あって、栄誉もあって、次いでに奥さんも美人で(確か映画にもちょこっと出てたよね)、憎た…いえいえ、羨ま…あ、そうじゃなくて、次回作が本当に楽しみだ。
猛特訓でマスターし、劇中で見事なピアノを披露するライアン・ゴズリング。
佇まいも眼差しも、同姓から見ても堪らなくセクシーだった。
また、さすがに今回「ファッキンテンポォォォォォッ!!」とは言わないし、出番も僅かだが、“フレッチャー教授”はこれからチャゼル作品の常連になるだろうね。
でも何と言っても、本作最大最高最強一番の見所は…
エマ・ストーン!エマ・ストーン!!エマ・ストーン!!!
何かの評で本作はエマの為の映画と言ってたが、120%同感。
キュートで、セクシーで、繊細で、光輝いてて…エマの魅力が大爆発!超炸裂!
予告編でも流れてる青いドレスのスカートをフリフリさせる仕草だけで、ああ、もう、堪らん…!
3度目の共演となるライアンとの息の合った演技、ダンス、口パクではなく実際に現場で歌ったレベル高く甘い歌唱力…。
一般的にエマは「アメイジング・スパイダーマン」のヒロインで知られているが、自分は「小悪魔はなぜモテる?!」の時にKOされ、「ヘルプ」「バードマン」でも素晴らしい演技で魅せてくれたが、本作は間違いなく現時点でのエマの最高作。オスカーも納得。
エマ・ファンなら、本作は絶対見逃せませんぞ!
明るいオープニングから魅了させるが、本作はいつまでも夢を見せてくれる訳じゃない。
それぞれ違う夢を追いかけると言う事は、必ず意見の相違が出る。
挫折。自分は夢を追いかけてたんじゃない、ただ夢に憧れてただけ。認めたくはない自分の限界…。
しかし、諦めなければ差し照らされる一筋の夢への光。
星の街で本当に星になれるのはほんの一握りだが、夢は叶う。
が、全てを手に入れる事は出来ない。
成功するとは同時に、何かを諦めなければいけない。
あの時あの決断をしていれば、また違った夢があったかもしれない。
それもそれで幸せな夢。
選択出来た夢と、今現実の夢。
どちらが良かったかなんて誰にも自分にも決められない。
自分でそれを選んだのだから。
切ない名残りを抱きつつ、人は今この現実で、夢を追いかけ続ける。
映画と、音楽と、夢と、エマ・ストーンと…。
本作はそれらの魔法のようなセッションだ!