「"映画の魔法"にかけられて」ラ・ラ・ランド 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
"映画の魔法"にかけられて
最初はタイトルだけ見て、全く予想はつかなかったものの、監督がデイミアン・チャゼル、主演がライアン・ゴズリングとエマ・ストーンと聞いて俄然興味が湧いた。
初めて見る楽しみを出来るだけ保ちたくて、予告編も出来る限り見ないようにしていたんだけど、いざ映画が始まってしまえばすぐ自分もLA LA LANDの虜になっていた。
ストーリーは夢を抱くバンドマンと女優の、夢を抱いた人なら一度は憧れるハリウッドでの恋物語という王道路線でありながら、舞台設定が現代で携帯が出るのにも関わらず、「それで解決すればいいじゃないか」なんて短絡的な指摘が出ない構成の巧さ、現代でありながらミュージカルシーンの軽やかなテイストと鮮やかな色彩による小気味良さ、過去の作品で舞台になった場所を使うことや様々な作品の撮影アイデアを取り入れて生み出されたであろう演出が、往年の映画の様でもあり、新しさと共に懐かしさも感じる素晴らしい作品になっていて、あまりのバランスの良さにこれからこういうLA LA LANDに類似した様な懐古主義的映画が増えていくんじゃないかと懸念するほどだった。
劇中に出てくる映画やジャズ、ミュージカルの知識や引用は、監督自身がその全てが大好きなのが手に取るように感じられるし、だからこそ劇中引用された作品を知れば知るほどこの作品がもっと好きになっていくんじゃないかって言う気がする。
踊りに関しては、gleeのマンディ・ムーアが手掛けた、ダンスの巧みさに目を奪われると言うよりも、ダンスが下手な自分でもセブやミア達と一緒に踊りたくなる楽しいダンスで、観賞後の帰り道は公園で踊ったセブとミアを思い出して踊り出したくなるのを堪えながら帰ったほどだった。
ストーリーの随所に登場する観光名所も現代と昔の垣根を曖昧にしてくれる重要な役目を担っていたと思うし、この作品のお陰でこれからの生涯でいつか行きたい場所がまたいくつか増えた。
ラストシーンに対する解釈は賛否あるかも知れないけど、個人的にはパンフレットでの監督のこんな言葉でその想いは瓦解すると思う。
"ラストシーンはただの夢じゃない。
本当に深い感情は時空も現実も物理法則も超える。
気持ちが心に溢れた時、天国から90人編成のオーケストラが降りてきて演奏してくれるんだ。
それはバカバカしいかもしれないけど、真実なんだ。少なくとも僕にとって。"
自分はこの言葉であのシーンは『あり得たかも知れない今』じゃなくて、『同時平行して存在する今』って言う多次元的な展開だと思った。
だってあんなにも深く繋がってお互いの夢を応援したんだから、ただのバッドエンドで終わるはずがない。
昨年ズートピアを観た時は、『また見たい、じゃなくてまた行きたい!』と思ったけれど、LA LA LANDも今そういう気持ちにさせてくれている。
夢を追い始めた人、夢を追うのが疲れた人、かつて夢を追っていた人は是非見て欲しい作品。
はじめのシーンで心奪われました!
「もう少しだけ短かかったらよかったな」とは思いつつ、最後の「もしかしたらあったかもしれない」人生の部分は欠かせないし、切りようがなかったのかなと思いつつ見ました。
サウンドパーを買うときには「ラ・ラ・ランド」のオープニングが、きれいに聞けることを目的に買いました。