劇場公開日 2016年3月5日

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「かゆいところに手が届く、至れり尽くせりのにイタリアン・コメディ!」これが私の人生設計 cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0かゆいところに手が届く、至れり尽くせりのにイタリアン・コメディ!

2016年3月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

正直、邦題もポスタービジュアルも今イチぱっとしないけれど…見逃すには余りにももったいない、最強のイタリアン・コメディがやって来た! 例えば、冒頭。田舎育ちの女の子・セレーナが好きなことに打ち込みながら成長し、建築家として海外に飛び出し活躍する過程をテンポ良く見せる。そんな彼女が、里心を一気に募らせるきっかけは、夜食の白いパスタ、赤いトマトソース、そしてバジルの緑の取り合わせ(イタリア国旗の3色!)。さらには、決め手のバジルはソースとなり、物語中盤では彼女に大きなチャンスをもたらすのだから心憎い。全編そんな調子で、スキも緩みもなく、絶妙なバランスで物語が形作られており、ぐいぐい引き込まれた。
女性が仕事で社会的に活躍することの難しさは、すでに繰り返し語られている。本作が新鮮なのは、女性が様々な場面でマンマ=お母さん的な役割を求められやすい上に、女性にとっても母親役は無難で演じやすいということを、力まずあっけらかんと描いている点だ。建設会社のボスは、秘書に面倒を掛けっ放しなのに、体面を気にして彼女の助言をうるさがる。憤って当然なはずの秘書も、現状に甘んじ、セレーナのように変化を求めようとはしない。…なんて話運びは、「女の敵は女」といったギスギスした展開になりそうだが、そこはイタリア。彼女には強力な助っ人がいた。それは、遠慮のかけらもない、おしゃべりでマイペースなマンマたち。集合住宅で出会ったおばちゃん、田舎から乗り込んできた母親と伯母、いずれもとにかくパワフル。マンマたちに振り回される中で、彼女は自分を見失わず、信じた道を貫くエネルギーをチャージしていく。マンマが腕によりをかけたテーブルいっぱいの料理を、共に囲む姿がそのしるし。そして、ユーモアは大切なスパイス! 美味しい食事と笑いは、苦境の中でも緊張をほぐし、元気をくれるのだ。
とはいえ本作は、女性だけに向けた物語ではない。女(男)はどうあるかという以前に、「一人の人間であること」が何より大切!と、明るく教えてくれる。それには、彼女の奮闘を支える、ゲイのバイト先上司・フランチェスコの存在が効いている。彼女との同居生活では平気で素の自分をさらす彼も、息子にはどう接していいのかわからず、距離を縮められない。彼女との関わりから息子との関係を見直していく彼の変化も手伝って、職場の一人ひとりがマイノリティであること=自分らしさを、声高らかにカミングアウトするクライマックスは、タイムアウト間際のロングシュートのように爽快だ。バシッとキマッた興奮そのままに、エンドロールの最後の一コマまで余韻を存分に味わいたい。ボナペティ!

cma