「実はかなり攻めたことをやっている。」クリミナル 2人の記憶を持つ男 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
実はかなり攻めたことをやっている。
ケビン・コスナーがいい。これはスターダムから凋落していった姿をリアルタイムで見てきた身からすると驚くべき復活劇である。まさか還暦を越えて「野蛮な凶悪犯」の役をものにするとは!
もちろん主人公だから物語上では善意に目覚めたりもする。しかし本作のコスナーは常に何をしでかすかわからない得体の知れなさをまとっていて、何やっても優等生キャラが抜けなかった過去とは完全に決別している。
コスナーの新境地が内容とみごとにシンクロしていたのが、後半の敵の女性を撲殺するシーン。敵とはいえハリウッドの娯楽アクションで大のオトナの主人公が戦闘能力を失った女性を叩き殺すなんてあり得ないはずなのだ。
でもこの映画を観て、越えてはいけない一線を越えた衝撃作だと思う人はいるまい。それはコスナーの演技の善と悪の振れ幅に説得力が宿っているからであり、その点だけでも実はとても攻めている、相当な野心作だと思うのである。
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