劇場公開日 2015年12月26日

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「武装集団は村を静かに支配弾圧蹂躙していく」禁じられた歌声 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

3.5武装集団は村を静かに支配弾圧蹂躙していく

2016年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台であるイスラム教の村は砂漠の中に、ぽつねんと存在している。
ひとびとの暮らしは穏やかで、ときに神を讃える歌を歌い、こどもたちはサッカーに興じたりもしている。
しかし、イスラム系武装集団が村を支配してからは、その暮らしぶりは変貌した。
外出する女性たちには髪のみならず、手や足首まで覆えと命令し、それは魚売りの娘にまで及んだりする。
神を讃える歌であっても歌うことは禁じられ、冒した者は地中に埋められて、礫を投げられ罰を与えられたりする。
さらに、武装集団の若い男は、夜陰に乗じて娘を犯すが、集団の長はイスラムの教えに則った正式な結婚だと主張する・・・というハナシ。

巻頭と巻末に、村の導師が、武装集団の長に対して、集団の支配のやり方がコーランの教えに則っているのかを詰問するシーンがあり、なかなか興味深い。
彼ら武装集団のやり方は、コーランの教えを都合よく曲解して、ひとびとを弾圧しているということだ。
導師の話す言葉の端々から、コーランの教えは、もっと優しく、価値観の異なる隣人を理化して、相手のために行為をなせ、といっていることがわかる。
ならばキリスト教と、さほど変わらない。

さて、映画はというと、先に挙げたそれぞれのエピソードが並行して描かれており、どちらかというと散文的な印象を受けました。
現実を見つめるという姿勢、弾圧・蹂躙が静かにひたひたと迫ってくるというのは評価できるが、村の導師なり、ひとりの少女なり(ポスターに描かれた少女)なりの一環した視点があると、もっと集中できたかもしれません。

りゃんひさ