劇場公開日 2016年6月11日

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シチズンフォー スノーデンの暴露 : 映画評論・批評

2016年6月7日更新

2016年6月11日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー

アメリカを敵に回した“世紀の告発”の決定的瞬間を記録した迫真のドキュメント

昨今は“史上最大のリーク”と呼ばれるパナマ文書問題がメディアを騒がせているが、それ以前に世界中を震撼させたのがエドワード・スノーデンによる内部告発だった。超大国アメリカが誇る二大情報機関、CIAとNSA(国家安全保障局)の職員だったスノーデンは、政府が秘密裏にネット上で膨大な量の個人情報を監視、収集している実態を暴露。これによって日本を含む同盟国への盗聴が行われていた事実も明るみに出た。かくしてスノーデンは祖国のお尋ね者となり、現在も亡命先のロシアに滞在中だ。

イラク戦争やグアンタナモ収容所をめぐるドキュメンタリー映画で知られるローラ・ポイトラス監督がアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した本作が凄いのは、監督自身が真っ先にスノーデンから匿名メールで接触を受けた人物であり、“世紀の告発”の始まりを克明に記録していることだ。アメリカ政府を敵に回し、大事件を引き起こした当事者を独占取材した驚くべき内容である。

舞台となるのは香港のホテルの一室。2013年6月3日の月曜日、ここを訪れたポイトラス監督とジャーナリストのグレン・グリーンウォルドはスノーデン本人と初めて会い、数日間にわたってさまざまな対話を交わしていく。なぜスノーデンは家族や恋人にも内緒で、これほど巨大なリスクを冒したのか。人権を踏みにじるアメリカ政府の横暴に失望した彼の強固な意志を確認したグリーンウォルドは、水曜日に英国ガーディアン紙に最初のスクープを発表し、すぐさまCNNが速報する。まさに世界に激震が走った瞬間だ。

ポイトラス監督のカメラは、自らの人生が一変することを承知で世紀の内部告発に踏みきったスノーデンの迷いなき言動を捉えながら、室内にみなぎる静かな緊迫感を生々しく伝えてくる。取材中にはなぜかホテルの火災報知器が鳴り響き、その場の一同が“警戒レベル”を引き上げるシーンもある。政府の裏切り者捜しが始まるなか、細心の知略や決断を要する告発者とジャーナリストの闘いが、タイムリミット付きのサスペンス映画のように繰り広げられていく。

そして映像も音声も極めて明瞭な本作は、国家権力が得体の知れないプログラムによって国民を監視=管理するネット時代の“自由”の危うさを警告し続ける。「これはSFではありません」という前置きから始まるスノーデンの一挙一動から、ひとときも目が離せない迫真のドキュメントである。

高橋諭治

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