「人間の尊厳とは何かということを考えさせられた」黄金のアデーレ 名画の帰還 瑞さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の尊厳とは何かということを考えさせられた
久々に感動の涙がこぼれた。想像していたより、ヒロインが魅力的だったし、サスペンスもあった。ヒロインのマリアは、信念の人で、ひたすら国家に対して絵画の返還を求めるような人かと思ったら、そうではなかった。立ち止まったり、悩んだり、そしてすべてが終わるまで長い年月がかかっていた。弁護士も最初はお金目当て。それが、ウィーンに行ったことによって変わってゆく。美術に詳しくない私でも見たことがあるあのクリムトの絵にそんなサイドストーリーがあったなんて… 以前観た「ミケランジェロ・プロジェクト」にも通じる話で、ナチスの犯した罪の深さを感じた。マリアがウィーンに戻りたくないのはなぜか? 映画が進むうちにその答えがわかってくる。ウィーンには幸せな思い出ばかりではない。アメリカへの脱出劇は緊迫感が伝わってきた。ナチスはユダヤ人の物を奪うことはできても、彼らの尊厳は奪うことはできなかったのだ。憎悪犯罪があちこちで起きている今だからこそ、考えなければいけないのではないかと思った。
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