「観るべき映画です」黄金のアデーレ 名画の帰還 空猫さんの映画レビュー(感想・評価)
観るべき映画です
クリックして本文を読む
構成がとてもシャープで。
言ってみて「起こったことしか描いてない」のですけど、ほんのすこしの間の演出で、すごく想像力を掻き立てられるのです、という作品でした。
主人公となったマリアさん。
事実をそのまま受け取ると、彼女は「ものすごい強運の持ち主の女性」。だけどそこで思考を止めず、彼女が抱えた運命について掘り下げて考えてみる。
世紀末ウィーンに活躍した芸術家たちが築いた芸術家文化とユダヤ人の歴史を継承し、アメリカに「逃げてきた」という彼女自身の「原罪」。裁判に関しても、言葉とは裏腹に常に臆病になっているのは、恐らく、彼女が大西洋を渡って今まで生き延びてきた間ずっと抱えてきた葛藤がそこにあるからなのでは?
そして晩年まで働き続けた。働き者です。きっとそれが彼女のDNA、なのかな。
どんな方だったんだろう。…難しい方だったのかも。そんなことを思いました。
また、全編を通じて、国民としての自尊心、正義、そして前に進むことの意味を考えさせられます。複雑な問題で、解決するしないの話ではないのですが、映画ははっきりそこを突いてくる。
人間の尊厳とは何か、この絵の所有権を一つのメタファーにして、観る者に問うてくるような、そんなメッセージを感じました。
評価は、私がクリムト作品が大好きで大学の時ベルヴェデーレで受けた感激を思い出したという理由で星多めで。
コメントする