「謎解きではなく、老ホームズの懺悔」Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 REXさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解きではなく、老ホームズの懺悔
少年と一緒に事件を解決するというよりも、彼との交流を通して、もう一度自分自身を見つめ直すというお話。
推理を惑わすものとして、一切の感情を否定してきたホームズが、時に真実を暴くことが人の助けになるわけではないのだと、90歳を越してようやっと気がつく。
ソウルメイトとして孤独を分かち合うことができた女性を、むざむざ死なせてしまったことへの後悔の念。
それを認めたくない頑なな心が、次第に記憶から事実を消し去ってしまって、自分がなぜ思い出したくないのかさえ、忘れてしまったようだった。老いとはこういうものかと、切なさを感じる。
イアン・マッケランは哀愁と傲慢さを絶妙なバランスで演じる。
父に何を言ったのかと詰問する日本人、梅崎役の真田広之も良かった。
だが、もう少し深い謎が散りばめられているのではと、期待してしまった自分がいた。
ロジャーが刺されたのはスズメ蜂だとすぐわかったし、梅崎の父親の話は謎でも何でもなかった。
蜂と山椒の話がくどいし、第二次世界大戦後の広島の場面はもうファンタジー。あそこはボケたホームズの夢の日本だということにしたい。
原作を知らないと、私のように純粋な謎解きものだと勘違いする人が多そうです。
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