「老ホームズ 名探偵の晩年」Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
老ホームズ 名探偵の晩年
シャーロック・ホームズってこれまで何度映像化されてきたか正確に知ってる人が居たらスゲェ…。
王道スタイル以外にも、アクション派だったり、現代で活躍していたり、時にはアニメで動物キャラになったりと変化自在。
本作もなかなかユニーク。だって、90歳の老ホームズ!
いきなりだけど、邦題詐欺。
90歳になっても老体に鞭打って尚現役のホームズが最後の難事件に挑むミステリー物を想像してしまうが、ちょっと違う。
引退し、家政婦の息子に養蜂を教える隠居生活を送るホームズが、ワトソンが出版した伝記本をきっかけに、自身を引退に追い込んだ唯一の未解決事件を回想する…というもの。
勿論、回想しながらのミステリー的要素もあるのはあるが、大部分はシャーロック・ホームズの人間像を膨らませたしみじみとしたドラマタッチ。
過去が度々交錯するも展開は淡々で、エンタメ・ミステリーが見たい人には退屈だろうが、自身の活躍が肥大に脚色され本や映画になり、史実との違いに難色を示したり、帽子も被らずパイプも吸わずイメージと違うと言われたり(そのスタイルは挿絵画家の創作なのは有名な話)、フィクションのキャラである筈のホームズがあたかも実在の人物のように、その晩年を描かれているのは、これはこれで面白かった。
老ホームズを演じるは、イアン・マッケラン。
紳士的な上品さ、曲者、ユーモア…この人以外老ホームズは考えられない見事なキャスティング!
名探偵も寄る年波には勝てず。ヨボヨボの現代の90歳と回想の30年前の演じ分け。
思い返すは、やり残しと後悔と孤独と亡き相棒…。
哀愁漂わせるさすがの名演!
真田広之の出演やトンデモ日本描写はさておき、
家政婦の息子マイロ・パーカー少年は言わば本作の“ワトソン君”。
変化球の“名探偵モノ”。
見てたら、金田一耕助が頭に浮かんだ。
「病院坂~」事件の後、渡米して消息不明になった彼の晩年…なんてのも見てみたい。