「真実と思いやり。」Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
真実と思いやり。
ホームズも人生終盤に差し掛かるとこんなことを考えるのか、
そんなことを考えさせられた親しみ深い本作だが、その発想の
面白さとマッケランの巧みな演技(76歳が93歳を演じるという)
が楽しめる。ただ、過去の描き方で日本(そして真田広之!)が
絡む部分が今ひとつ説明不足、山椒の表現もそれはないだろ~
と思ってしまう部分があるのは仕方ないのか。それはさておき。
現代版シャーロックでも描かれているホームズご本人にとって
最も足りないところ^^;が本作でも描かれる。彼の推理・分析力
から暴かれる真実とは、それが確かに正しい事実ではあっても、
その事実で人が救われるか否かは分からないわけだ。誰しもが
同じ感情を持ち同じ感覚で物事を受容するわけではないことが、
この偏屈な孤独老人となったホームズの世話をする家政婦の目
から見てもよーく分かる。オバサン風情ぴか一のリニーさんが
「何でこんな田舎でこんな老人の世話をしなきゃいけないの」と
いう目で常に彼を見ているのが面白い。しかし彼女の息子には、
養蜂を教えてくれる面白い老人として興味深く映っていたのだ。
晩年の回想をする時点で最重要案件となっていた過去の未解決
事件がホームズのボケた(ゴメンなさい)脳裏を行ったり来たり、
なかなか記憶の糸にも結びつかないのだが、幼い相棒の冷静な
分析がやがて幾つもの記憶を呼び覚ましていく。そこには実に
奇怪で悲しい事件の真実があるのだが…。家政婦親子の秘密を
含めて一気に後半で全容解明するホームズの真骨頂が楽しめる
が、最後の最後で彼が示す「思いやり」に心地よく胸を打たれる。
(劇中劇のホームズに笑えた。あの人もシャーロックだもんね)