「自己主張を控えたオリバー・ストーン」スノーデン 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
自己主張を控えたオリバー・ストーン
オリバー・ストーンはなんか苦手。自分の価値観を映画にべっとりと貼り付けてそれを観客に押し付けられるような気分にさせられるからだ。なんとなく、映画からストーンの「俺様感」を見つけてしまう。正直、「スノーデン」はどうかなぁ?と思っていた。スノーデンの伝記を装ってストーンの自己主張が始まるのかも?なんて思っていた。まぁ実際そういう部分もないわけではないのだけれど、でも実際の作品を見たら、なんかオリバー・ストーンちゃんと一歩引いて客観的な演出してました。意外や意外、「スノーデン」しっかり楽しめました。やっぱりちょっと頭でっかちな感じは相変わらずオリバー・ストーンぽいなって感じはしたものの。
何より、ジョセフ・ゴードン=レヴィットの演技がとても良くって、いつもと声色を変えてスノーデンを完全に自分の中に落とし込んだ演技。彼の大きな存在感があることで、この映画が「オリバー・ストーン映画」ではなく列記とした「ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演の伝記ドラマ映画」として成立した感じ。最も観客に近い視点を持つ役柄として登場するシャイリーン・ウッドリーや、どんな映画でももう憎らしい程に達者で巧いメリッサ・レオも含めて演者がとても良く、ドラマティックで見ごたえがあった。
これは現在進行形の事件であり問題の話。今後どう展開していくのかもまだ不明瞭なこと。もちろん、知らずに監視されているというのは気分が悪いものだし、映画を見ていても、実に単純に「怖い」という思いが沸いてきた。これだけインターネットが普及していながらも、社会がまだインターネットに対し未熟な発達しかしていない(社会の発達をネットの発達が追い抜いてしまった)今、一度ちゃんと現実社会とネット社会のそれぞれの在り方についてきちんと考え、自分の手で守れるものは守らなければならないと改めて思った。