劇場公開日 2017年1月27日

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「あなたの価値判断を問われる、”旬”の映画」スノーデン Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あなたの価値判断を問われる、”旬”の映画

2017年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

いままさに起きていること。たとえ"非公開"設定しようとも、ネットワークにアクセスした時点で、すべてのプライベート情報は覗かれている。この現実を受容しなくて、ネットワーク管理社会の何を語れようか。オリバー・ストーン監督は、この深刻な事件を、"興行作品"として非常にバランスよく仕上げている。意外なほど面白い。

昨年のアカデミー作品賞「スポットライト 世紀のスクープ」(2016)も、国際的スクープ事件を取り上げた映画だった。しかし、本作は"歴史的事件"ではなく、"現在進行形"のものだけに、半端ない緊迫感をまとっている。エドワード・ジョセフ・スノーデン氏は、いまなお逃亡状態でロシアに暮らしているのだ。

すでにローラ・ポイトラスによる「シチズンフォー スノーデンの暴露」(2016)という、スノーデン氏本人出演の作品があり、第87回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞している。よって事件の真相確認をするだけなら、新たな作品を作る意味はない。

そこでオリバー・ストーン監督は、スノーデンの半生を映像化し、彼の素顔や、恋人との関係性など、等身大の人間として悩み苦しむ姿を描くことで、観客自身の倫理観に問いかけをしてくる。

ベトナム戦争経験者として「プラトーン」(1987)や「7月4日に生まれて」(1990)を作り、アメリカ政治を批判しつづける監督が、"サイバー戦争"の危機を描くのは当然の流れであり、戦争は最前線からデスクトップへ場所を変えた。「ドローン・オブ・ウォー」(2015)や、「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」(2016)などで描かれた"ドローン戦争"の現実もさりげなく呈示する。

スノーデンを演じる、ジョセフ・ゴードン=レビットは、幅広いタイプの役柄を演じ分ける実力派という意味では、同い年(35歳)のエディ・レッドメインと共通点を感じる。

恋人のリンゼイ・ミルズ役を、「ダイバージェント」(2014/2015)シリーズのヒロイン、シャイリーン・ウッドリーが務める。また最近、大作の主役がめっきり減ってしまった、ニコラス・ケイジが端役で出演しているのが新鮮だ。

オリバー・ストーン監督は脚本も自身で書いているが、「(アメリカ人は、)自由よりも安全を必要としている」というCIA高官のセリフがある。まるで、トランプ新大統領の言葉とシンクロする。

映画には"旬"がある。名作の普遍性もリスペクトする一方で、”いま”を生きている観客が感じなければいけないテーマを持った作品は、賞味期限内に観ておくべきだ。

(2017/2/1 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ/字幕:中沢志乃)

Naguy