「色々恐ろしい。」チャイルド44 森に消えた子供たち ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
色々恐ろしい。
ミステリーではあるのだろうが(原作は未読)、てっきりそれが主軸
だと考え、森に消えた44人の子供の行方を捜査するストーリーだと
期待してしまうと、ちょっと肩透かしか。実在した猟奇殺人事件で
あるチカチーロ事件をモデルに描かれるのは、スターリン政権下で
独裁国家の闇に翻弄された主人公と家族、さらに彼らの生い立ちに
遡っていく。最近日本で公開作が続いているT・ハーディ祭りの一編。
どうなのよ?ロシア訛りの英語って~と、冒頭から違和感漂う設定
ながらも、さすが舞台で培った演技力を発揮するハーディ。妻役には
アナタこそ猟奇だわ~と云わんばかりのN・ラパスが、今回は従順な
妻に扮している。時代が時代なだけに陰鬱とした空気がどんより漂い、
冒頭から酷い仕打ちが散々描かれる。部下が惨殺した両親を目の前に
突然孤児になってしまった子供達に向けられるハーディ演じるレオの
眼差しは、先日あの爆走映画で魅せた彼の瞳に近い。当時どれだけの
孤児が街に溢れていたかを描く冒頭の場面で少年がレオだと語られ、
あーだからか。と思うもののこの伏線がまさか最後まで活かされると
は思っていなかった。犯人探しは後半まで持ちこされてしまうので、
その前にレオとその妻までもが容疑をかけられ、追う側が追われる側
となり命を狙われる恐怖が延々と続く。これは結局彼らの話なのかと
その辺りで腹を括り行く末を見守ると、意外な展開となり、田舎町の
警察署長で名優G・オールドマンまで登場する。どこまでも豪華共演!
さて、テーマは殺人事件へと戻されて、その後はあっけなく真犯人が
登場してしまうので、あららら…とは思うんだけど、とにかく前半で
これはドラマですよ。と観せられてきた観客は、あとはあの野郎との
対決か!?と腹を括れる。まぁちょっと…都合良すぎる気もするけど、
ハーディの熱演もあり、最後まで気味悪い作品ながら、感動があった。
(ちょっとテーマが暈けてしまった感アリ。時代の空気感は畏怖絶大)