「【”全体主義国家の闇”そして、その国家が1930年代初期に計画的にウクライナ地方で起こした人為的飢饉ホロドモールが産み出した哀しきモノ。現在、ロシアを統べる男に見させたい、恐ろしき作品である。】」チャイルド44 森に消えた子供たち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”全体主義国家の闇”そして、その国家が1930年代初期に計画的にウクライナ地方で起こした人為的飢饉ホロドモールが産み出した哀しきモノ。現在、ロシアを統べる男に見させたい、恐ろしき作品である。】
■冒頭で少しだけ映される孤児たち。旧ソビエトがスターリン体制の中、人為的に起こしたホロドモールと呼ばれる飢饉の犠牲者である。
近年公開されたホロドモールの実態を描いた「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」を鑑賞するとその悲惨さに触れる事が出来る。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作は、ロシア政府が上映を拒否した作品だそうである。
ー それはそうだろう。旧ロシア政府の恐ろしき行ないが齎したモノを描いたこの作品を上映する訳がない。-
■1953年、スターリン政権下のソ連で、列車の線路脇で、子供たちの変死体が次々と発見される。内臓の一部が切り取られ、殆どが溺死。
ところが、犯罪を認めることは国家の理想に反するとして、すべて事故扱いされる。
親友の息子の死をきっかけに真相究明に乗り出した秘密警察MGBのレオは、やがて国家からも追われることになる。
・作品の雰囲気はとても恐ろしいが、面白い。但し、冒頭に記したホロドモールの知識が無いと、犯人が抱えた狂気は分かりづらいと思う。
・レオ・デミドフを演じたトム・ハーディ、彼の妻になったライーサを演じたノオミ・ラパスは、矢張り良い。存在感抜群である。
・レオを執拗なまでに追い詰める肝っ魂は小さいが冷酷なワシーリーの存在も良い。
ー ムカつく男だが、悪役のキャラが立っている作品は面白いと思う。-
・最初は秘密警察MGBのレオを恐れて内心嫌々ながら結婚したライーサに、レオが”俺の事を未だ怪物だと思っているか”と言う問いに”違う”と答えるシーンも印象的である。
■だが、この作品はイロイロと分かりずらい部分がある。(敢えて記載はしない。)そこが少し残念かな。
<個人的には、面白く鑑賞した作品である。
作品が醸し出す”全体主義国家の闇”が巧く描かれていたと思うし、ラストのワシーリーが何の罪もないのに見せ締めのため撃ち殺した夫婦の二人の娘をレオとライーサが引き取り、新しい家族を作って行くんだなと思わせるシーンも微かな希望を感じさせる作品である。>