劇場公開日 2016年5月7日

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「男臭い骨太群像劇」64 ロクヨン 前編 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0男臭い骨太群像劇

2022年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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僅か7日間だった昭和64年に起きた少女誘拐事件から14年後。時効が迫る中、事件の真相に迫る刑事達の物語。そんなストーリーだろうなと、予告編などで勝手に想像して鑑賞したが、かなり趣の違った作品だった。事件の真相究明へのポイント、布石は描かれているが、序章段階で終わっている。真相究明編は後編でどうぞということらしい。

本作(前編)は、誘拐事件が起きた時、刑事だった主人公・三上(佐藤浩市)が広報官なり、記者クラブと対立し、警察内部の権力構造に翻弄されながらも自分の意志を貫いていく物語。男達の体臭がむんむんするような骨太な群像劇であり、硬派揃いの男達の激しい本音のぶつかり合いは迫力十分。

東洋新聞のキャップ秋山(瑛太)に象徴される屈強な記者クラブの面々。警察権力の権化のような冷徹な県警上層部。次第に主人公を理解し懸命に支えるようになる広報室員達(綾野剛、金井雄太、榮倉奈々)。彼らの、類型的ではない、人間臭い個性的な演技が奏功し、ドキュメンタリーを観ているかのようなリアルな作品に仕上がっている。

そんな強かな記者クラブと警察上層部の板挟みになりながら、自らの娘の失踪に苦しみながら、自分の生き方を貫こうとする主人公の生き様。不器用に、泥臭く、道を拓こうとする姿勢に心打たれる。特に、ラスト近くで、記者クラブに単身乗り込んで、記者達に、広報官という組織人ではなく、一人の人間としての想いを伝えるシーンは感動的であり、佐藤浩市の渾身の演技に圧倒される。

広報官という立場を超えて、主人公は、僅かな手掛かりを元に、誘拐事件を解明しようと奔走するが、ラストで、ついに、誘拐事件真相究明への幕が切って落とされる。後編を観なければ収まりが付かない。後編での男達の更なる躍動に期待したい。

みかずき