「世界よ、これが日本の中間管理職だ! いやあ警察官って素晴らしいお仕事だなあハハハ…💀」64 ロクヨン 前編 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
世界よ、これが日本の中間管理職だ! いやあ警察官って素晴らしいお仕事だなあハハハ…💀
昭和64年に発生した未解決身代金誘拐事件、通称「ロクヨン」。
時効まであと1年と迫った平成14年を舞台に、この事件に隠された真実を追う警察広報官、三上義信の戦いを描いたサスペンス映画。
前後編として構成されており、本作はその前編にあたる。
元ロクヨンの捜査官で現在は群馬県警の広報官を務めている主人公、三上義信を演じるのは『THE 有頂天ホテル』『ステキな金縛り』の佐藤浩市。
三上の部下の1人、諏訪を演じるのは『GANTZ』シリーズや『ヘルタースケルター』の綾野剛。
三上の部下の1人、美雲を演じるのは『のぼうの城』『図書館戦争』シリーズの榮倉奈々。
三上と対立する記者クラブのメンバー、秋山を演じるのは『のだめカンタービレ』シリーズや『アヒルと鴨のコインロッカー』の瑛太(現:永山瑛太)。
ロクヨン事件で娘を失った父親、雨宮芳男を演じるのは『さくらん』『あん』の、名優・永瀬正敏。
ロクヨン事件では自宅班として捜査に参加していた元刑事、幸田一樹を演じるのは『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『ゴールデンスランバー』の吉岡秀隆。
群馬県警本部長、辻内欣司を演じるのは『SPEC』シリーズや『暗殺教室』シリーズの椎名桔平。
群馬県警警務部長、赤間を演じるのは『悪の教典』『るろうに剣心』シリーズの滝藤賢一。
ロクヨン事件の捜査官だった元科捜研の研究員、日吉浩一郎を演じるのは『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『エイプリルフールズ』の窪田正孝。
記者クラブの1人、手嶋を演じるのは『海街diary』『ヒロイン失格』の坂口健太郎。
三上義信の娘、三上あゆみを演じるのはテレビドラマ『表参道高校合唱部!』や『先輩と彼女』の芳根京子。
2015年にはテレビドラマ化もされている、小説家・横山秀夫の同名人気小説を映画化(ドラマ版の主演はピエール瀧)。
原作/テレビドラマ版は未見。
なお、この原作は「D県警シリーズ」の第4作目にあたるらしく、このシリーズの第1作目である「陰の季節」が、本作に先駆けてテレビドラマとして放送されている。
主人公は本作にも登場している、仲村トオル演じる二渡真治警視。
このドラマも未見であります。
因みに、後編は未鑑賞ゆえ、物語がこの後どのように展開していくのかは分かりません。
あくまでも前編のみの感想になります。
端的な感想。
めっちゃ面白い〜🤩✨
日本の刑事ものではNO.1の面白さだったかも!
前後編という構成上、本作を観ただけでは「ロクヨン」の全体像は全く見えてこない。
というかこの映画、少なくとも前編は「ロクヨン」の真相を解き明かすとか、そういうジャンルの映画じゃない。
正直これには驚いた。全然調査とかしないんだもん💦
「ロクヨン」という未解決事件の裏に隠された県警の隠蔽。
そのことを知った元捜査官・三上の葛藤を延々と描き続けるのがこの映画の特徴。
本当に、ただひたすら佐藤浩市が苦しむのを観る映画。
上司にいびられ、記者クラブに悪態をつかれ、対立する刑事部からは目の敵にされ、被害者遺族の元へ頭を下げにいき、家庭では娘が行方不明…。
一体なんじゃこの地獄は…😱
完全に組織に飼い殺しにされている哀しき中間管理職・三上。
腐敗仕切った県警の中で、それでもただただ組織に尽くす牙を抜かれた飼い犬。
しかし、「ロクヨン」の背後で行われていた隠蔽工作、「ロクヨン」をダシにして行われる本庁のクソ人事を知り、ついにブチ切れる三上!
組織に従うだけだった中年のおっさんがその牙を取り戻し組織に対して中指を突き立てる!🖕
うぉー、これは燃えるぜぃ🔥
事件の真相を追うミステリー的な面白さというよりは、『半沢直樹』的な企業ものの面白さに満ちた一作。
したがって、悪役は殺人犯ではなくクソ上司。
滝藤賢一や椎名桔平が最高に最悪な演技を見せてくれる。いやー、むかついたねー💢
特に三上の靴を見た椎名桔平の一言が…。悪魔か貴様!?
いやぁ、やっぱり企業ものはクソ上司ならクソ上司なほど盛り上がるねぇ。
ものすごく大きな事件が存在しているのだがあえてそこには触れず、その大きな流れの中にあるごく小さな、しかし三上という人間にとってはどこまでも重要な出来事にスポットを当てる。
本作はこのエピソードの取捨選択が抜群に上手い。
後編の為のただの前振りに終始してしまい、その結果大して見どころのない映画になってしまう、というのは前後編映画の前編にありがち。
しかし、本作ではこの前編に三上の葛藤と覚醒のイベントを集約させており、ちゃんと前編だけで一本の映画として成立する様に構成されている。
そして後編へのフリが効いた、クリフハンガーな終わり方。
本作は、まさに理想的な映画の前編だと思います。
もちろん後編も気になるのだが、前編だけでも映画として完成しているので別に観なくてもいいんじゃないかな、と思っていたりもします。
それだけこの前編の満足度が高かった。
「日本映画史に残る傑作の誕生」というキャッチコピーに偽りなし!!
ただ、キャラクターの名前や関係性を把握しづらかった。仲村トオルが主役を務める『陰の季節』を観ていれば、この点は解決されたのかな?
そっちも観ておくべきだったな〜…。ちょっと後悔。