劇場公開日 2016年5月7日

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「演者たちの魂を1本にまとめあげたかった!」64 ロクヨン 前編 Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5演者たちの魂を1本にまとめあげたかった!

2016年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

ポスタービジュアルのとおり、

日本を代表する実力派俳優の終結ですね。

もう豪華キャストのぶつかりあいで、怒涛の見応え。

役者同士のケミストリーが、

映画全体をダイナミックにしてます。

元刑事で窓際広報官の三上を中心に

物語が転がるんだけど、

ほとんどが彼を演じる佐藤浩市劇場(笑)

およそ100本の映画に出演してきたキャリアだから、

優しさ、悔しさ、悲哀、動揺、怒り...

様々な感情で翻弄する男の演技はさすがです。

けど、それを際立たせる

サブキャストたちがホントに上手い。

まず永瀬正敏さん。

彼はミステリートレインからファンですが、

すっかりシブくなりましたね。

子を亡くした親を演じる身を削った迫真の演技に、

同じ親として涙が溢れてしまいました。

そして広報官にくってかかる新聞記者の瑛太さんは、

心情が届く深い演技だし、

三上の部下綾野剛さんの等身大な感じは、

難しいのによくこなしてました。

そんな中堅を中心にして、夏川結衣さん、三浦友和さん、

吉岡秀隆さん、緒形直人さんらが、

自分の立ち位置でキャラを立たせながら存在感を誇示。

キャストだけでわくわくする映画は、

久しぶりでした。

そんな役者のヒリヒリした質感だけで、

この映画を観る価値は十分あるのだけど、

やっぱり前後篇の仕組みににちょっと疑問かなぁ。

この前篇の内容は、

予告篇で描かれるような誘拐事件の

犯罪サスペンスものではありません。

64の誘拐事件の核心にはあまり触れず、

広報官と記者クラブぶつかり合いや、

警察内部の隠蔽に割かれている。

ほぼそんな内輪話だけで2時間を引っ張るので、

不必要と思えるカットもたくさん。

正直、2時間半くらいで1本にまとめた方が、

クオリティも含めて良かったのでは。

興行的に見込めるから2本施策が

邦画界のプチブームだけど、

豪華キャストのギャラを工面するための二毛作?

と勘ぐってしまいました。

まあ、素人を多用した「ソロモンの偽証」よりは、

ずいぶんマシですけど。

小説やドラマが先行している作品は、

劇場で観る価値をどうつくるかだ。

この演者たちの魂を1本にまとめあげるような、

演出家の意図を感じたかったです。

やっぱりエンディングも、

ありがちな尻切れだし。

前篇だからって、

中途半端感で観客を投げ出しては

いけないと思うのですよ。

置き去りのままの様々な伏線を、

見事に収束させる後篇に期待しましょうか。

けど気になるから、

やっぱ小説読んじゃおうかな(笑)

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