「後編が楽しみ。」64 ロクヨン 前編 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
後編が楽しみ。
ネタばれを含みます。原作、ドラマを知らずに映画を楽しまれるかたは、後編までごらんになってからお読みください。
このミステリーがすごい!でベストワンになった横山秀夫の原作を、瀬々敬久監督が映画化。彼のキャリアベストになる傑作である。
昭和64年の誘拐殺人事件を回想でなく描いたのは英断であった。間違いなく後編に生きる構成であろう。
この事件の現場に刑事部の浮沈のかかった事案に関わる人物が全員そろっていたのだから、回想で追うだけなのとはわけが違う。
警察広報と記者クラブの対立が、前編の柱になっていて、そのなかで、刑事部と警務部の暗闘も描かれる。
このあたりの組織の構図は、僕が原作も読んだしドラマも観たので、わかりやすく見えたのかもしれないが、それを差し引いてもわかりやすくなっている。
ドラマのときもそうだったが、伏線があからさまに敷かれている。原作でもあったのかもしれないが、三上(佐藤浩市)が雨宮(永瀬正敏)の家に二度目に訪れたとき、雨宮がさりげにあるものを隠すようにおしやる。
三上の家にかかってきた無言電話。実は村越(鶴田真由)、松岡(三浦友和)、それから美雲(榮倉奈々)の実家にもかかっていて、だからあの無言電話が娘からのものとは限らない、となる。原作では、交通事故死した銘川老人の家にもかかってきたことになっている。
原作やドラマを知らない人はこれに気づくのだろうか。
こういうトリッキーな部分はさておき、終盤の三上の記者クラブへの発表には、なぜか目頭が熱くなった。広報室の連中の思いも、もちろん三上自身の思いも、理屈でなく胸を熱くした。
結末は、原作と違うそうなので、どうなっているか。
横山秀夫の警察小説初の映画化は、前編を観る限り、大成功である。