「苦虫噛み潰したような表情にされる映画」テラフォーマーズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
苦虫噛み潰したような表情にされる映画
酷評なので、読みたくない方は読み飛ばしてくださいな。
たいてい原作未読の場合が多い自分なのだが、今回は
珍しく原作マンガの3,4巻までは読んだことがあった。
まあそんな『話の流れは知っとるよ』くらいの人間のレビュー。
……ああ、その前に皆さん、
『進撃の巨人』実写版にはどんなスコアをつけただろうか?
原作への思い入れが無く、ネット上での“場外乱闘”にも
興味の無かった自分は、あの映画はあそこまで悪し様に
言われる出来ではなかったと思っている(3.0判定を付けた)。
人物描写やツメの甘い設定やシナリオ(特に後編)は
そりゃ酷いものだったが、それでもあの映画には
映画でしか表現不可能な映像的興奮があった。
これまでの邦画を凌駕するものを作ってやる!
という作り手の気概もひしひしと伝わってきたし、
実際それに成功しているシーンも間違いなくあった。
ここまで書いたら、
このレビューがどう続くかはなんとなく予想できるだろう。
果たしてこの実写版『テラフォーマーズ』は、
観客の度肝を抜いてやろうという作り手の気概が
伝わってくるようなエンタメ映画であったか否か?
僕の答えは、否、ノー、ノン、ナイン、ニェット。
100%ナシだ。
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世界中から集められた精鋭たちが主人公という原作設定を
日本人キャストで成立させるための設定改変はまだ納得。
次々に登場する昆虫の能力には物珍しいものも多く、
図鑑を眺める小学生のようなワクワクを感じることはできる。
CGで描かれた火星ゴキブリ軍団も、CG感はアリアリだが、
人と一緒に映ってまるきり実在感がないほどには酷くない。
宇宙船に張り付く火星ゴキブリ軍団とかもまだ我慢する。
ゴキブリの生態や生息分布がさっぱりわからなくなる
ゴキブリウェーブもまだ我慢する。CGに関して
ハリウッド映画とかに勝てる訳ないし。
徐々に明かされていく陰謀も、ステレオタイプだが飽きはしない。
(原作の細かい内容を忘れてたのもかえって良かったかも)
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しかしながらこの映画最大のメインは
『火星ゴキブリと昆虫の能力を移植された人間のバトル』。
でもって、本作が見せるのは……
役者陣のアクションスキルが低いのか、活かす気がないのか、
スローだらけで、細切れで、寄りの画ばかりの鈍重アクション。
その鈍重さを更に増強し、失笑をも付加するコスプレメイク。
この作品の直前に鑑賞したのが『シビル・ウォー
キャプテン・アメリカ』という最高位のアクション映画
だったのも不味かったのかもだが、さらに前週観た
邦画『アイ アム ア ヒーロー』のアクションが、
世界と余裕で戦える出来だった点はもっと不味かった。
『GANTZ』『るろうに剣心』『アイ アム ア ヒーロー』etc……
VFXアクションの進化も著しい今の日本で、
まだこんなレベルのアクションを全国規模で
上映される大作映画でやってんの?と。
ハナから期待してない監督ならまだしも、三池監督は
『クローズZERO』や『十三人の刺客』で良い
アクションを撮っている。それに比べて本作の
これは何だ? よほどやる気が無かったのか?
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次。演技とかテンポとか。
原作では恐ろしさ十分だった火星ゴキブリとの
ファーストコンタクトが、全然怖くない。
なにより主人公よ。あれが今まで命懸けで
守ってきた恋人の首の骨を折られた男の怒り方かね。
こっちが「ナニヤッテンダテメー」って言いたいよ。
他のキャラも、人気も実力もあるキャストをこれだけ
揃えてるのに、まるで演技に熱が感じられない。
昔のゴキジェットCMのロボコップの方が、
まだ熱い演技してたと思うよ。
で、登場時あれだけ素早かったのに、
以降はゾンビのようにゆっくり迫るゴキブリ軍団。
それ以上にゆっくりのんびり会話を続ける主人公たち。
会話が終わるのをゆっくりのんびりじっくり待つゴキブリ軍団。
なんだろ、この映画、ほぼ全シーンが間延びして感じる。
そこを削るだけでも宣伝文句の〝衝撃の109分間”(笑)を
10~20%くらい短くできたんじゃないかしら。
最後に色々。
SF的な描写の既視感。特に序盤の25世紀の日本の風景。
『ブレードランナー』('82)の世界観に影響を受けた映画なら
幾らでもあるが、パロディどころかパクリと呼べるほど
独自性の無い本作の未来風景にはイラッときた。あと
小栗旬も多分『フィフス・エレメント』のゲイリー・おーるd
まあいいや。小栗旬の役のファッションセンス
以上に心配なのは作り手のユーモアセンスだし。
アース製薬のネタとか、滝藤賢一と女性陣2人の
やりとりとか、ヤクザ2人組とか、面白いのアレ?
あと、大量の敵がぶつかってくるのを防御するのに、光学迷彩の虫なんて役に立つん? あれもギャグ?
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以上。
文句言い過ぎたかね。まだ言い足りない気もするけど。
これだけ豪華な役者陣を揃えておきながら、割と悲惨な出来。
シナリオが必要以上に面倒臭くないのがまだ
救いだし、そんなに眠くもならなかったが……
……これ、もう海外でも上映されたんだよね?
なんというかこう……恥ずかしい。
不満タラタラの2.0判定で。
<2016.04.29鑑賞>
私も観ました。
悲惨でしたね。
何となくですが原作の大ファンだった
宇宙戦艦ヤマトの実写版やガッチャマンの
実写版と同じく悲しみが、ありました。
まだ、ヤッターマンは深キョンが話題に
なっただけましでしたが。
ルパン三世は全く別の作品でした。
これから銀魂やハガレンもありますが
やはり期待しちゃいけないんでしょうね。