「恋から愛へと向かう美しい映画」キャロル kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
恋から愛へと向かう美しい映画
映像・音楽・演出ともにたいへん美しい、洗練の極みのような映画でした。
物語も説得力があって引き込まれました。
テレーズを演じるルーニー・マーラの目の演技が凄い。デパートでキャロルと出会ったときの目の表情で「あっ、いま恋に落ちた!」と解ってしまう。あの恋する瞳はハッキリと印象に残る。
キャロルはため息が出るほどエレガント。香りの表現が多かったのも、キャロルの官能的な魅力を引き立たせてます。旅先で2人が香水つけあってジャレるシーンには、女性同士の恋物語だからこそできる妖しい美しさを感じました。匂いってものすごく記憶に残りますし。
グッときた場面は、新年を迎えてからの美しいラブシーン…ではなく、
(そこももちろん名シーン)
キャロルが元夫に娘の親権を譲渡する代わりに娘の面会権を求めるシーンです。
キャロルって、これまで基本自分のことしか考えてなかった。テレーズのことも「私の天使」として見ていて、1人の人間として尊重しているというよりも、自分のためのかわいいペット+すがりたい依存対象って感覚だったと思う。だから彼女を傷つけた訳だし。
だがこのとき、ついにキャロルは自分のためでなく娘のために行動した。テレーズとの旅の失敗が彼女を成長させた。この後キャロルは仕事を得て、1人の自立した人間へと変化していく。再会したテレーズとの関係も、もはや以前とは違うものになるでしょう。
テレーズとの出会い〜逃避行までは燃えるような恋物語であり、キャロルの成長〜ラストまでは恋から愛へと変わっていく物語なのかな、と感じました。これから愛の物語が始まることを示唆するエンディングだったのでは、と思います。
1950'sの同性愛に対する不条理な偏見、そしてハージとリチャードのパートナーを所有物としか見ていない感じは怒りを禁じ得ないです。ハージの方が目立つけど、リチャードは相手の気持ちに一切目が行っておらず、かなりキモかった。後半テレーズに忘れられているのには思わず笑ってしまった。
それから、ブロークバック・マウンテンのような不条理に踏みにじられるような悲しいエンディングではなく、ハッピーエンドを匂わす終わり方だったのがとても良かった。
気になったポイントはケイト・ブランシェット様の背筋くらいですかね。ケイト様はお美しくあそばされていますが、脱ぐとまるで格闘家だ!範馬勇次郎的背筋。