劇場公開日 2016年2月11日

「同性愛と家族愛。」キャロル ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5同性愛と家族愛。

2016年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

P・ハイスミスが自身の体験(といっても売場での出逢いまで)を基に
発展させていったというラブストーリー。まぁサスペンス色も濃厚
だが、それほど怖い展開にはならない。女同士と聞くとどうしても
「アデル、ブルーは~」の方に気が入ってしまうが、こちらは時代や
設定が全く違うので描かれ方がエレガント。1950年代、そのままの
ファッションや車やとにかくこだわりの映像が満載。演じる二人の
女優の押し殺したような瞳の演技が秀逸で、観る者を釘付けにする。
この時代に同性愛が認められる筈もないが、自我を殺して家族の為
に尽くす妻でいるべきなのか、目覚めたら正直に生きるべきなのか。
私自身が子持ちなゆえキャロルの行動に首を傾げる場面も多かった。
あんなに小さな娘とて両親の不仲や、なんでママは女の人ばかりと
一緒にいるんだろう?みたいな不安は持つ筈で、御体裁を気にする
夫の家族もキャロルも誰も娘の気持ちに歩み寄っていこうとしない。
冒頭のクリスマスプレゼントを選ぶシーンで、新発売のプラレール
が選ばれ、後に一回だけ出てくるのだけど、あのオモチャをもっと
印象的に使えなかったのかしら?と変なことを考えながら観ていた。
だから後半やっとキャロルが弁護士達の前で娘の親権について語る
場面で(まぁ気の毒だけど)ホッとした。最初からそれが言えてれば
彼女も夫もアビーもテレーズも振り回され疲弊することはなかった。
行きつ戻りつ不安に駆られながら進んでいくのが恋愛ではあるから、
もちろんこの展開は正しいのだけど私には心底歯痒かったのも事実。
美しいと賞賛されるケイトはどちらかというと怖いイメージが強く、
ウブな女の子を演じるルーニーが成長する様子が強く印象に残った。

(貧乏だけど幸せな結婚か。金持ちだけど不幸な結婚か。あー難しい)

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ハチコ