「ブランシェットの衣装がすばらしい」キャロル よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
ブランシェットの衣装がすばらしい
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同性愛を描いた作品を観ると、しばしば思うことがある。
なぜ、異性同士の性愛を描いたものよりも、同性同士のそれのほうが切ない感情が強く伝わってくるのか。
やはり、性愛というきわめて個人的な問題は、そこに社会的な規範などの障壁が存在しなければ、他人の心に届くドラマとして成り立たないのだ。
逆に言うと、なんの障壁もない男女が、どれほど深く愛し合おうとも、それは個人的な感情の出来事に過ぎず、赤の他人の心を動かす題材としては弱いということである。
時々、その手の個人的な「事情」を描いた作品に出会うことがあるが、非常に無駄な時間を過ごした気分になる。
この作品は、現在以上に同性愛への無理解が強かった20世紀半ばの二人の女性の恋模様を描く。
恋が始まる瞬間の期待と不安、恋が進行していくときの高揚感と視野の狭さ、恋が終わろうとするときの身を切られるような思いを、映画は一つ一つ丁寧に伝えている。
これは、シナリオや俳優の演技以上に、音楽と彼女たちの衣装・美術によるところが大きい。特にケイト・ブランシェットのための衣装は、その時代を想起させつつも、現代にも通用する洗練されたもので、ため息が出るほどに素晴らしい。
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