劇場公開日 2016年10月21日

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「信義を重んじる男と男には、わずかの時間で友情が芽生えるものなのだ」われらが背きし者 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0信義を重んじる男と男には、わずかの時間で友情が芽生えるものなのだ

2016年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

冒頭、唐突に殺しのシーンから始まる。まるで、バッターが初球を様子見しようとしていたところ、内角高めにストレートを投げ込んでのけぞらされたような気分だ。
そして、ロシアンマフィアのディマが、モロッコでたまたま出会った大学教授のペリーにあることを依頼することから話が動き出す。
ディマは、これまで散々汚いことに手をそめてきたであろうに、いまさら身の危険を察して、せめて家族だけでも助けたいなんて虫がいい。ペリーも、モロッコ旅行は教え子との軽い浮気がバレた償いなのか、夫婦間がぎくしゃくしている。だけど、ディマの家族愛が本物と感じたペリーが彼のために尽くそうとするあたりから、二人に芽生えた信頼と友情が画面に心地よい緊張感をもたらしていく。そこに手を差し伸ばすMI6のヘクター。悪人だからと粗雑に扱っているように思えたが、実は彼には彼なりの正義があった。その背景が明らかになるに従い、だんだん人間味が出てくるのだから不思議なものだ。
モロッコやフレンチアルプスの風景も綺麗で、ため息がでる。
ドンパチが少ないのもいい。だからピストルを構えたときの緊迫感が、かえってリアリティを感じる。そしてすべてがうまくいかないのも、ほどよい焦らされ方だった。ラストのオチはなんともイギリスらしい。二人の出会いがフラグになっているなんてニクイ。

役者がみな適役で、とても上質なサスペンスだった。

栗太郎