劇場公開日 2016年1月30日

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さらば あぶない刑事 : インタビュー

2016年1月28日更新
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舘ひろし&柴田恭兵が語り尽くす「あぶない刑事」30年の矜持

相棒、盟友といった言葉では語り尽せないほどの深い絆。「あぶない刑事」のダンディー鷹山(タカ)こと舘ひろしと、セクシー大下(ユージ)こと柴田恭兵は、バディものの新たなスタンダードをつくり、それを成長、熟成させて絶対領域ともいえる信頼関係を構築した。テレビシリーズの開始から30年。フィナーレを飾る「さらば あぶない刑事」には2人の愛、こだわり、矜持のすべてが集約されている。(取材・文/鈴木元、写真/江藤海彦)

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1998年「あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE」では、2人のサングラスが海に沈んでいくラストシーンが話題となった。2005年「まだまだあぶない刑事」には死体のDNAが2人と一致するというくだりがあった。だが、「あぶデカ」は“永遠”であり“まだまだ”なのである。2人も10年ぶりの復活を自然な形で受け入れた。

舘「すごくうれしかったですね。ただやる以上は、今まで僕が感じていた失敗もあったので、やる前に1回皆でミーティングをしたいと。『あぶない刑事』始まって以来、恭サマと脚本家、監督、プロデューサーと脚本に関してミーティングをしたんです」
 柴田「確かにミサイルが飛んできたり、タンカーを人が両手で止めたりと、ちょっと荒唐無稽になりすぎていた感があったので、舘さんがミーティングをしようよと言ってくれたのがうれしかった。最後なら最後なりの、しっかりとした骨太のものを作って、その周りで僕がアドリブを入れさせてもらい初期に戻ったような『あぶデカ』にしたいなという思いがありました」

テーマは、舘が常々口にしている「ハードボイルド、スタイリッシュ、ファッショナブル」に根差した原点回帰だった。

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「『あぶない刑事』という作品は、柴田恭兵の作品だと思っている。なぜかというと、これだけ面白くしてきたのは恭サマなんだよね。テレビの第1話でもユージはスタイリッシュで、それからアドリブ中心になっていった。映画の1作目のように、どこか骨太のきっちりしたストーリー展開があった上でオーナメントのようにアドリブがあるという、そういうものにしたかった」

準備稿の段階からそれぞれの経験を踏まえた意見を具申。潜入捜査で留置場にいるタカをユージが迎えにいく冒頭のシーンでは、舘がお互いを呼び合うセリフ「タカ」、「遅かったな、ユージ」を追加した。撮影はクランクイン当日。「あぶデカ」の復活を明確に打ち出し、期待感を膨らませる粋なオープニングだ。

柴田「タイムスリップしたみたいで、10年ぶりって感じは全くなかったですね。ああ、楽しいものが始まるって喜び。僕は柴田恭兵と舘ひろしが感じている格好良さは、年配の人にも小学生にも絶対に通じると思っていたんですよ。60いくつになっても同じことしかできないけれど、そういう自信みたいなものが。それは僕1人ではできない。タカとユージのコンビの妙だと思うんですよね」
 舘「そうだね。この2人の距離感って絶妙だよね。お互いに、これはユージがやる芝居、タカが言うセリフということが年をとっていくごとに明瞭になっている気がする。リスペクトも含め、2人の立場がはっきりしてきた感じがあります」

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かつて刑事ドラマのバディは、互いの短所を補完し合うのが定番だった。その“常識”をタカとユージが覆す。それぞれの長所を前面に押し出し、互いに引き出し合うポジティブ&アクティブを融合させキャラクターの魅力を増幅させてきたのだ。常に化学変化をし続けて30年。幾度の空白期があるとはいえ、感服の言葉しか浮かばない。

柴田「この作品一本でやってきたわけではないので、とても刺激的なんです。10年間のブランクも新鮮だったし、本当に楽しい現場でしたね」
 舘「この形というか雰囲気は、俺たちにしか出せないんだよね」

加えて浅野温子、仲村トオルもレギュラーでい続けていることもシリーズの大きな魅力のひとつ。後輩・町田透役の仲村は、前作で2人の上司に昇進しているものの相変わらずの“トロい動物”扱いだが、それを楽しむように己の立ち位置を確立している。

舘「あの芝居、リズム感。トオルは天才ですよ。『あぶない刑事』の前に『ビー・バップ・ハイスクール』があったけれど、柴田恭兵という人に触発されてすごくのびたんだよね」
 柴田「舘さんと会って、頭をひっぱたかれたりね」
 舘「いやいや、俺は関係ないんだけれど、俳優としてあの時代に柴田恭兵と会ったことはすごい財産。トロい動物だけれど、そういうふうにできるのがあいつのポテンシャルの高さ」

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一方の浅野扮する真山薫も、他の追随を許さない独自性で2人を見事に振り回し、要所では引き締め役を担う。TBS「なるようになるさ。」(2013)で夫婦役だった舘は称賛を惜しまない。

「やっぱりすごいと思う。彼女は、普通の人の芝居を超えたところでやっているから。今はセリフを言えればOKという時代だけれど、彼女はその上を目指している。素晴らしい女優さんだなと思います」

横浜港署の中核4人がそろってこその「あぶデカ」だと2人も得心している。唯一無二の、まさに最強カルテットだろう。

舘「この4人がそろえば本当に怖いものなしで、どんな癖のある俳優さんがきても絶対に負けないし、やっていける自信はありますね」
 柴田「怖いものなしっていうと、そんな気もするけれど、周りがどれだけ大変か…。大丈夫かな、舘さんって」
 舘「(笑)心配なのは、おまえだって?」

会話の節々にも見せるあうんの呼吸は、スクリーンでも余すところなく発揮されている。タカの手放しハーレーでのショットガン、ユージの疾走や華麗なステップシークエンスなどの十八番も随所に披露。定年までの5日間をさっそうと駆け抜ける。クライマックス、2人が追い詰められた際にユージが発する「残りの弾の数と敵の数が全く合いません」というセリフは舘が考えたそうで、楽しそうに話す2人の絶大な信頼感が垣間見えた。

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舘「あの状況で、あの目線で、あの言い方ができる俳優は彼しかいないと思うんだよ。あれは絶品だね。俺もああいう芝居をしたいけれどできない」
 柴田「シリアスな切羽詰まった中での余裕みたいなものが面白さだと思うんですよね。もう死んじゃうんじゃないかというギリギリの時の余裕が、格好良かったりするんですよ」

それだけに、「さらば」と言うのは寂しい限り。ここまでファンを引き付けている要因については「それが分かったら、次の作品を作りますよ」と舘が冗談めかしたが、ひとつのケジメをつけた手応えは2人の表情から感じ取れた。

舘「本当の、と言うと語弊があるかもしれないけれど原点に戻れた。『あぶデカ』本来の姿に戻れたかなって気はする」
 柴田「今まで応援してくれた人に恩返しができる作品になって良かったなって思います」

それでも“さらに あぶない刑事”を期待してしまうのは、ないものねだりだろうか。

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