ダム・キーパーのレビュー・感想・評価
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ショートフィルムの素晴らしさ
油絵で描かれたノスタルジックなショートアニメーション
20分にみたない映像の中でほぼ無声であるにも関わらず社会的なメッセージがギュッと詰め込まれている
それでいて詰め込みすぎという印象はなく登場人物のブタくんの心情もしっかり伝わってきた
ほぼ無声であることでコチラがキャラクターに感情移入したり考える余白になっていると感じた
私達が生きる現代は情報が溢れかえり、簡単に映像や文章で知りたいことが確認できる
だからこそ無声であるといった足りないものがあることから感じるものがあるのではないだろうか
短い作品なので忙しい方にも是非みてもらいたい
道徳の時間に取り入れて欲しい一作
まず、陽のあたたかさまで感じるようなぬくもりのある絵柄がだいすきだ。
そして短く入るナレーションもすき。
内容は、あらゆる角度から掘り下げられる深みをもった、人生をまとめたかのような作品。子供たちには、これから生きる道の指針としてほしいような内容。
ラストシーンには、『グリーンブック』でのセリフ「寂しさには事前に準備しておくといい」(うろ覚えですが)を思い出した。
製作者の伝えたい大事なことは伝わると思うが…
本作は短編映画で、米在住の日本人と日系アメリカ人?が作ったアメリカ映画…だそうです。多分。珍しいですね。短編アニメーション部門でノミネートもされたとか。
自分は見ていて内容が非常に日本人っぽいと感じたのですが、途中で出てくる学校のトイレが明らかに日本じゃないのでアメリカ製作なのか?でもアメリカっぽくない話だな、でも「日本語吹き替え」って書いてあるしやっぱりアメリカ?他の国?いやいや…とか思いながら見てました。調べて納得。
スタッフロールまで入れても18分しかないため、多くを求めるのは酷だとは思うけれども、個人的にはちょっとスッキリしないというか、伝わりづらい部分も結構あると思う。が、最低限大事なこと(製作者が伝えたいであろうこと)は恐らく伝わった気がする。
ほぼ無声映画のような作りで、台詞は小さ~い声で最初と最後にナレーションが入る程度で、あとはキャラクターの笑い声とか物音とか、そんなもん。なので割と大変なことが起きてても、物語は静かに進んでいきます。
あらすじ:
主人公のブタ少年は、外から来る闇から街を守るため、街の周りをぐるりと囲うダムを代々管理しているダムキーパー。毎朝同じ時間にダムを開き、夜には外からやってくる闇に街が呑み込まれないよう、やっぱり毎日同じ時間にダムを閉じる。毎日同じだが、1日も欠かしてはならない、街の人々の命を守る大切な仕事。しかし、ダムができてから長い年月が経ちダムキーパーのありがたみを忘れた街の人々は、友達もいない、汚い姿で隠れるように暮らすブタを嫌がるように。学校では馬鹿にされ、外を歩く大人達にまで嫌な顔をされるなか、クラスにキツネの転校生がやってくる。2人はすぐに仲良くなり、唯一無二の友人になれると思ったブタだったが…
いや、18分しか経ってないの!?と見終わった後思わずびっくりするくらい濃いストーリーです。少なくとも30分は絶対あったろ!!と何度も確認してしまうくらいにはしっかりしていました。
アニメーションのクオリティは勿論、18分とは思えないほどスピード感がありながらみっちりと密に詰まった内容で、ちょっとした空き時間にこれが見られるなら30分アニメよりこっち見るなと思うくらいの出来にはもちろんなっている。
ただ、上にも書いた通りちょっと「?」と思う部分もあり、「?」のまま終わります。が、そこはやはり18分しかないし、ほぼ無声だし、仕方ないのかも。
まず主人公のブタが虐められている理由…ダムキーパーのありがたみを忘れただけでああなるか?
豚鼻を揶揄するような、現実世界と同じように「ブタ」ということ自体が馬鹿にされているように感じる箇所もあり(白人のことを「白い豚」と罵る言葉がある通り欧米でもブタはあまり良いイメージではない)、決して「ダムキーパーなんてダセェ仕事してんな~!虐めたれ!」みたいな話ではないようです。子供の虐めなんぞ最悪理由がなくても何とかケチをつけて始めるものなので、まぁ学校での虐めに関しては置いておくとしても、この主人公、道行く大人達やスクールバスの運転手にまで白い目で見られてるんですよね。
キーパーの仕事でいつも汚れているので、そのせいなのか…それとも臭いも凄いのか…わからん!!何でそんなに嫌がられてるの!?
それに、こんな状態じゃうっかりこのブタが死んだらキーパー引き継ぐ人はいなさそうだし、引き継いでも誰も真面目にやらなそうだし、死ななくても具合悪くて動けない時は?寝坊したら?こんな大事な仕事なのに、子ブタ1匹に任せっきりって…
これが仮に「ダムなんて今はもう意味を成してないだろ、信じて必死にキーパーやってるああいつ頭おかしいわww」と思ってる世間と、実はちゃんと意味があって主人公だけがそれを知っているから黙って仕事をこなしている、みたいな設定ならわかります。でもどうやら世間の人々も一応ブタがキーパーやってることは知っていて、特にキーパーなんか必要ない!とか思ってるわけでもなさそうなんですよね。
…じゃ、何であんな冷遇されてんだよ!!!
でもストーリーはテンポ良く展開するし、別に「これがわからないと話が理解できない」というほど重要なことでもないため、ギリギリ「ま、いいか」と流して集中できました。
細かい説明入れたくても、あれ以上のナレーションは冗長だし、台詞で説明するのもな…ゴリゴリの喋るアニメーションにしてたらこんなに評価は高くなかったと思います。雰囲気が良い。
まず設定をどこかで調べてある程度理解してからでないと、見ながら引っ掛かる箇所は結構あると思います。
設定的には、街の人々、嫌な言い方するとブタに命を握られてるようなもんですよね。笑
それにしちゃ、お前ら心臓に毛が生えてんの?というほど容赦なくブタに嫌がらせしまくり。逆に言えば、街の人々が命を握られていることを理屈では理解しながらも他人事みたいに無関心になれるほど、キーパーが過去に一度もサボったり失敗したことがなかったということなんでしょう。
今作は一応アメリカが舞台なんでしょうが、日本でも、米農家の人が米作りで泥だらけになるのを馬鹿にするなんてことがあるそうで…「当たり前」になって、それがどこからくるものなのか興味を持ち想像する力、何故そうなるのか考える力がなくなると、感謝の心も忘れてしまうものなんでしょうね。
つい最近ネットで「息子が突然『首相も会社の社長も男ばかりだから女より男の方が偉い』と言い出して、これからどう育つのか怖くなった」という母親の投稿を見かけましたが(口振りからしてもう小さな子供ではなさそうだった)、こういった子供の想像力の欠如は、考える力の低下と共に今後大きな問題になっていく気がします。
その前には歩道橋の上からトラックが走っている道路に向かって自転車を投げ落として捕まった子や、ネットでアイドルのSNSに何度も酷い誹謗中傷を書き込み捕まった子のニュースもありましたが、どれも「それをやったら他人にどんな影響が出るのか」も想像できないし、「自分はどうなるか」すら想像できない子だったということ。
昭和頃は、祖父母同居で子沢山の家も多く、今ほど娯楽も多くないため友達との遊びも想像力を駆使してその辺の木の棒や石を何かに見立てて遊ぶ。兄弟姉妹の友達グループに交じって下の子も一緒に遊びに行くことも多く、上の子は下の子の世話をする責任を負わされているので充分には楽しめないのが普通だし、下の子は下の子で上の子の話についていけないし、足の速さ等でも差が出るので必死に追いつこうとする。そうして双方が(不本意ながら)歩み寄る。他にも祖父母と一緒に外出すれば歩調を合わせて歩かなければならないなど、自分とは全く違う個体と自然と触れ合い、早い段階で「自分中心に世界が回っているわけじゃない」「自分の基準と他人の基準は違う」ということを生活の中で自然と学べる場が今より圧倒的に多かった。
あと嫌な話をすると、今の子より危ないことをして遊ぶ子も多かったので、あわや友達が死にかけたとか、流血沙汰になったとか…「今元気でも明日は違うかもしれない」とハッとさせられることが多かった。
最近は一人っ子が多いうえ、共働きの親が自分達の予定に合わせて子供の予定も決めてしまうことも多く、指示がないと何して遊べば良いかわからない子がとても多いんだとか。
現代の子供達は自分と全く違う個体との触れ合いが圧倒的に少なく、毎日親の言うことだけ聞いて、一人っ子だと誰ともオモチャを取り合うこともなく、誰に譲ってあげることもなく、「世の中は自分の思い通りにならなくて当然」と学ぶ機会が少ない。
もちろん一人っ子でも園や学校でそれを自然と学び取る子もいるが、兄弟姉妹がおらず親の都合で子供も動かすなら、親が積極的にその子と条件の違う人達に接触する機会を設けないと、他人のことを思いやるために相手の状況や立場を想像する力は育ちにくいのかも。
いくらモラルだマナーだと教え込んでも、結局は相手を慮る能力は想像力の一部ですから、ある程度の想像力がないと話になりません。
「どんな人なんだろう?」と色々想像すれば興味もわく。興味がわいてその人と精神的に関わりを持てば、簡単に見下したり仲間外れにしようとはならないはず。
将来金になる能力ばかりを注視するのではなく、人間として生きるベースになるこういった能力にも、もっと注目してほしいものです。
キツネは転校初日、クラスメイトの態度を見てブタの心情を察し、自分にできることでブタを元気づけようとします。でもこの元気づけ方…キツネもだいぶ精神的に問題を抱えていそうな感じ。後半でキツネが悪者かもしれないと思わせるため(人を騙す嘘吐きイメージの「キツネ」なのもそのため?)かもしれないが、ちょっと陰気な憂さ晴らし。
また、作中の設定としてはこの外からやってくる闇というのは、公害?みたいなもののようなんですが、これって「心の闇」のことも表してるんでしょうか。ガスマスクみたいなので防御できるみたいなので、闇といっても光が入らなくなるという意味ではなく、その「闇」を吸うと死んでしまう…ようですが。この辺もよくわかりません。モブがキャーキャー言いながら逃げてるけど、最後街でバタバタ動物が倒れているわけでもなく…蛾は落ちて死んでたから、恐らく長く吸えば動物達も死ぬんでしょうが…
ブタを中心に見れば、「感情に振り回されて大事なものを失うことのないように」とか「誰に何を言われようと大事なのは続けること」とか、そんな感じかもしれませんし、街の人々を中心に見ると「理解されず過小評価されている重要なものが世の中には沢山ある」「思いやりや感謝の心を忘れることは自分の首を絞めること」、キツネを中心に見ると「全く悪い状況もひとさじの奇跡で覆されることもある」「他者に手を差し伸べたことで自分の人生も変わる(人じゃないけど)」とかかなぁ。
結局、作中ではブタと街の人々の関係が変わったのかどうかは描かれていません。ラストがブタとキツネの無邪気な2ショットなので、有象無象のことはどうでもいいってことなんでしょうが…普通に死人出てる中でのあの無邪気な笑い声だったら衝撃すぎて笑う。
ストーリーもよく練られ、短編と思えないほど内容が盛り込まれ、起承転結もはっきりしているので展開もわかりやすく、映像もとても可愛らしくほっこりする絵柄から徐々に滲み出るダークな側面がよく表現されていて映像作品としてとても良かった…と思うのですが、脳裏に焼き付くにはいまひとつパンチが足りないというか、もうほんの僅か何かスパイスがあっても良かったのではないかなと感じます。
正直言うと、自分は良い話だったとは思うものの「記憶に残る」というほどではありませんでした。
最近では三宅伸行監督の『サイレン』という短編実写映画(こちらもレビュー書いてます)がとても良かったです。こちらは15分ほどの作品で、登場人物2人しか出てこないし場面もほぼアパートだけなので、視覚的にはほとんど変化がないのですが、自分にはこちらの方が結構「見た!」という満足感があり、記憶にも残りました。
『サイレン』のレビューに詳しく書いてますが、こちらは極限まで無駄を削ぎ落とし、テーマがかつてないほど明確にわかるようになっているため、「理解できた」満足感がこちらの方が強いのかも。『ダム・キーパー』の方はぼーっと見てたらただ「何かアニメ見たなぁ」くらいになってしまう気がします。
日本昔話か何かに今作とちょっと内容の似ている『とうせん坊』って話があるんですが、こちらの方がよりダークで衝撃的で悲しい話なんですよね。これを今作の後に見てしまったせいか、若干薄れてしまいました…
『とうせん坊』は映画じゃないのでレビューはありませんが、Youtubeかどっかで見られると思います。10分アニメなので興味のある方はぜひ。絶望感すごいし絵面も『ダム・キーパー』みたいに可愛くないので、あまり小さい子に見せるとちょっと怖がられるかも(^^;
油絵に全てが込めてある。
18分という時間でこれほど濃厚に描けるのは何気にすごい。アニメーションも油絵で親しみやすく感情移入しやすくなっている。
チャップリン作品や砂の器の過去の回想シーンなどを観たときにも感じたけど無声映画って感情移入しやすいのかな?
優しいタッチの心染みる社会派アニメーション
ダムを守る豚の少年は、いつもススだらけの顔をバカにされ、クラスメイトにイジメられていた
転校生のキツネの少年との出会いを通して、関係や大気汚染の恐ろしさ描いた、優しいタッチの社会派アニメーション
懸命にダムを守る少年の誠実で優しい性格や、差別されイジメられながら葛藤する姿がノスタルジックな映像背景に描かれて、より一層切なく心に染みる
本作は、アカデミー賞にノミネートされた
Have you seen the little piggies crawling in the dirt? ブタくんがイジメられる理由はそっちじゃないほうがいい気がするのだが…。
「ダム・キーパー」という役目を担ういじめられっ子のブタの少年と、転校生であるキツネの少年との出会いが引き起こすとある事件を描くファンタジー・ショートアニメーション。
日本語吹き替えナレーションを務めるのは『ウォーターボーイズ』シリーズや『悪人』の、レジェンド俳優・柄本明。
陰気なナレーションからこの映画の幕は上がる。
クレヨンで書かれたような陽気で可愛らしいアニメーションなのだが、いじめ描写はかなり胸糞。明るいルックとは対照的に、物語は常に暗い影に覆われている。
「ダム・キーパー」という、暗闇から街を守る仕事とは一種の暗喩なのだと思う。
不条理な現実に、心を閉ざしてしまいたくなることもある。しかしそれに立ち向かわなくてはならないことをこのアニメは説いている。まるでイソップ童話のように教訓たっぷりである。
ブタくんとキツネくんの心温まる友情にはホロっとするところもあるが、全体的にはあまり乗れず…。
問題点はクライマックスが弱いことだと思う。
ブタくんが風車を回さなかったことにより、暗闇が街を覆う。この闇は空を舞う蝶々が死ぬほどの毒気を含んでいるのだが、その絶望感、恐怖感の描き込みが弱い。そこを強く強調してこそ、それに立ち向かうブタくんの命をかけた覚悟がより活きてくると思うのだが…。そりゃあんまりディザスターを描き過ぎると全然別の映画になっちゃうんだろうけどさ。それならそれで良いじゃん。
あと、ブタくんが虐められている理由。
普通なら街を守っている「ダム・キーパー」は尊敬の対象になるのでは?おそらく、長い間暗闇による被害が出ていないことで町の住人は「ダム・キーパー」のありがたみを忘れている、といった感じの設定なんだろうが、そこがあまり伝わらない。
ブタくんが虐められている理由はなんなのだろう?
あの世界では、ブタは差別される存在なのだろうか?他の動物は豚っ鼻の物真似で弄っていたし🐽
「ダム・キーパー」の仕事により、ブタくんはいつもススで汚れているわけだから、「こいつ汚ねー!」みたいな虐められ方を強調した方がドラマ的には良かったと思う。
職業差別という問題を提示しつつ、汚れてしまう仕事こそ人々の役に立っているんだ!みたいなメッセージも込められるしね。
美しいアニメーションであることには間違いないが、物語的なカタルシスの無さと、ブタくんの描写にあまり納得がいかないということで、少し辛めの点数です。
ダークだけど、優しい作品。
『ダム・キーパー』鑑賞。
*声の出演*
柄本明
*感想*
YouTubeで期間限定で、公開されていたので鑑賞。
見る前は、あらすじを全く読んでません。この作品は、暗闇から街を守っている子ブタ君と、絵が得意なキツネくんの友情物語でした。
柄本明さんのナレーションが渋くて良くて、他のアニメーションとは違い、全編油絵で描かれたアニメーション。
主人公は、大気汚染から街を守る=ダムキーパーの子ブタ君。しかし、学校では孤独で同級生からイジメられてます。よくあるイジメで、中身はダークです。
しかし、絵が得意なキツネ君が転校してきて、絵を通じて心を通わせるんですが、後半はグッときました。
イジメが絡んだ話なので、ダークな部分はあるけど、優しい。不思議だな~いじめって好きじゃないんだけど、見終わったあと、心が温かくなりました。
この油絵が良いですね。約20分でしたが、とにかく素晴らしかったです。
オススメです!
ブタちゃんが超可愛い
堤大介がピクサーを辞めてまで作り上げた短編作品。泣きました。示唆性と象徴性に富んだ物語とそれを視覚的に伝えるためのアニメーション技術が見事に調和している。なにより主人公のブタちゃんが超可愛い!iTunesで300円
可愛らしいキャラクターに深いメッセージ。
第9回札幌国際短編映画祭(SAPPOROショートフェスト2014)で、
ベスト・チルドレン・ショート賞(小学生たちがオフィシャル審査員として選びました)と札幌市平和賞のダブル受賞した作品。多くの人に指示されるであろう作品ですが、様々なメッセージを含んでいて何度も見たくなる。キャラクターも可愛い。
子供たちが審査し選んだ作品が、オスカーにノミネート!素晴らしい!
<札幌国際短編映画祭に出展していた作品なので、札幌プラザ2.5(400席の劇場)での映画祭2014.10.8~13(6日間で1万人以上の観客動員)で鑑賞しました。>
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