グローリー 明日への行進のレビュー・感想・評価
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病めるアメリカを動かした名スピーチは圧巻
マーティン・ルーサー・キング・Jr. -誰もがその名を学校の教科書等で知る偉人。これ程の偉大な人を描くのは初めての映画というのがUSAの消えない闇に思う。
我々のような『有色人種』では信じられないというか考えられない白人の悪しき価値観。わずか50年前の出来事というのが改めて驚く。未だ根絶しないアメリカ国内の人種差別に日本人は国際人としてもっと憤りを発しないといけない。
ラストのキング牧師の病めるアメリカを動かした名スピーチは圧巻です。お勧めの映画
黒人映画で最もパワフルかつ希望にあふれている
今年観た中で最もパワフルな映画だ。黒人差別の映画は数多くあり、評価の高いものも多い。そんな中でも最も輝くのが、この『グローリー…』だ。グローリーの意味は「栄光」。輝かしい栄光がこの映画にはある。タイトルにある通り、“行進”のシーンが多く出てくる。その規模は行うにつれて、どんどん大きくなる。最初の行進のシーンで圧巻されていたのに、その後2度も行進してくれちゃうもんだから、やられてしまう。涙腺崩壊ではなく、彼らの栄光に畏怖の念を感じてしまうのである。今作、アカデミー主題歌賞を受賞。観終わった後にあんな歌を流されたら、動けなくなってしまう。ラストシーンでは、行進に参加した人達のその後の経歴も簡単に紹介してくれるので、とても親切。わずか2時間足らずの映像の中に詰められるだけめいいっぱい詰め込まれている。とても面白い。
「暴力装置」に服従はしない
「I Have a Dream!」の演説で有名なキング牧師のお話であります。
物語は、キング牧師がノーベル平和賞を受賞した直後から始まります。一人の牧師の活動として、また、一人の人間の人生において、最も輝ける山の頂上に達した、とばかり僕は思っていたんですが、この映画を見ると、そうではなかったんですね。
公民権制定後もアメリカ国内、特に南部では「厳しい」なんて生易しい言葉では済まされない、とんでもない状況であったことがわかります。
キング牧師自身も一人の夫であり、奥さんも、子供達もいる。
一家団らんの夜、牧師の家に電話がかかる。
「お前の子供が吊されるのが楽しみだぜ!」
脅迫電話です。
ノーベル平和賞受賞者の家族が、なぜ、これほどの脅しと侮辱と威圧を受けねばならないのか? 人として、賞賛と敬意を表するならわかるんですが、実際はこんな目に遭っていたんですね。
さらにはFBIによる、組織的なキング牧師宅の盗聴と脅迫。
「ホンマかいな」と疑いたくなるでしょうが、これが、たった50年前に実際にアメリカで起こっていた事実であり、現実であったのです。
もっともひどい黒人差別が行われていた、南部アラバマ州。キング牧師たちはアラバマ州セルマから、州都モンゴメリーまでのデモ行進を計画します。
彼の元には、やがて白人からも多くの協力者が現れます。
「私達もデモに参加させてください」
デモの当日。キング牧師たちはデモ隊の先頭に立って、互いに腕を組み、静かに歩き始めます。目の前に立ちはだかるのは、銃と、こん棒で武装した州警察。その後ろには軍隊まで。それに向かって彼らは、静かに、しかし、着実に一歩を進めてゆくのです。
キング牧師については「非暴力」を貫いたことでよく知られています。
彼はガンジーの「非暴力・不服従」運動に大いに共感していたのですね。
当時のアメリカに住む黒人たちには「選挙に参加する」という「権利そのもの」がありませんでした。
投票箱がありますね。投票用紙に立候補者の名前を書く。そして投票箱に入れる。これで一市民が自分の意思を表明できる。国の政治に参加できたわけですね。
この「投票用紙」という紙切れを「投票箱」に入れる「権利」。
僕自身、二十代、三十代の頃は投票を、よくサボってました。今更ながら反省するものですが、ようやく五十代になってから、選挙に欠かさず行くようになりました。
いま、選挙に行っていない皆様。ぜひ本作をご覧になってくださいませ。
1960年代、この「投票用紙」を「投票箱に入れる権利」
その権利を勝ち取るために、どれだけ多くの黒人たちの命が奪われたのか。
僕たちはもういちど、襟を正して「投票」という行為、国の政治に参加する、その重さを噛み締めてみるべきだと思います。
本作では、黒人たちのデモ行進に参加した、白人が襲われるシーンがあります。善意でボストンから、わざわざ駆けつけたこの白人男性。しかし……
「黒人に協力するヤツらは、白人であろうと容赦しない」
差別主義者たちの返答は「暴力」によって彼の命を奪うことでした。
いま、この日本の国でも、政治が多くの関心を集めております。連日、国会議事堂の前には、抗議のデモが行われております。
ところで「国家とはなんぞや?」という大命題があります。ちょっとしらべてみましたら、びっくりする答えがありました。
マックス・ウェーバー曰く「最大の暴力装置を持つものが国家である」
「暴力」という側面から考察してゆくと、比較的、国家というものが定義しやすいらしいのです。
国家は裁判で人をさばき、最終的には自国の国民を「殺す権利」さえあります。
「暴力は使わない、でも悪政に対して服従はしない」
これは最も崇高な人間らしい、信念ではないでしょうか?
ぼくはガンジーさんが大好きです。
「佳いことは、カタツムリのように進むのです」という彼の言葉が大好きです。
猛スピードで、法律を作ろうとする人たちがいます。
なぜそんなに急がねばならないんだろう?
世界で最も大きな暴力装置、そのシムテムのなかに、このクニはいま、歯車の一つとして組み込まれようとしている。
その現実に対して、ぼくは静かに抵抗し、服従したくはないのです。
なお、本作は女性監督の手によって制作されました。アメリカが、自ら暴力の渦のなかへ突き進んだ結果、招いてしまった現在の混迷。そのなかで「非暴力、不服従」の精神の象徴でもある、キング牧師の映画を作ろうとしたこと。エバ・デュバーネイ監督をはじめとする、スタッフ、キャストの皆さん、その気高い精神に、敬意を表したいと思います。
映画「グローリー 明日への行進」
キング牧師による黒人の選挙権獲得に向けた戦いを描いた映画である。ここ数年アカデミー賞関連で人種差別がテーマの映画が評価されているが、これもその一つである。
映画としては目立つところが少ないように思うが、現在の日本の投票率の低さを考えるとキング牧師と、共に戦う仲間たちの言葉が胸に突き刺さる。
また、日曜日事件のシーンで人間の残酷さと、黒人への非人間的な扱いを見せつけるように表現しているところは上手く映画として出来ていると思う。
是非、この映画を見ていろいろと考えて頂きたいと思う作品である。
キング牧師の弱さと強さを描き場面設定に的確な台詞が用意され緩みない...
キング牧師の弱さと強さを描き場面設定に的確な台詞が用意され緩みない演出でセルマで起こった血の惨劇を再現した問題作。
憲法で保障された当たり前の権利を執行するのに暴力で阻止される不遇な時代に無抵抗運動で対抗したキング牧師、いつ何処で撃鉄が引かれてもおかしくない状況で何度も警告をされていた事に改めて驚いた。
メッセージ色が強く好き嫌いが分かれる作品だと思います。
アメリカ公民権運動の歴史を知る
1965年、アメリカ合衆国アラバマ州セルマで起きた『血の日曜日事件』を描いた作品。
映画冒頭の爆発シーンは、1963年9月15日に起きたアラバマ州バーミングハムの16番街バプティスト教会爆破事件みたいですね。始まっていきなり爆発するんで、ちょっと驚きました。
原題が『SELMA』と言う事が示している通り、物語は基本的にアラバマ州のセルマを出ません。邦題が『グローリー 明日への行進』と言うことと、そもそも、多くの日本人はアメリカ公民権運動についての知識があまりないので、キング牧師の半生を描いた作品と誤解するかもしれませんね。もっとも、日本人に“セルマ“と言っても、何のことやら、もっとわからないかもしれませんが。
劇中、キング牧師に対する呼びかけが『Dr.King』と聞こえていたのと、エンドロールに“Dr. Martin Luther King, JR.”と書いてあったので、キング牧師が博士であった事を初めて知りました。神学の博士号を持っていたんですね。でも、博士号をもっていると、牧師と言う呼び方ではなく、博士と言う呼び掛けになるんですね。そっちが優先なんだ。
しかし驚くのは、この映画が描いたのは、リトルロック高校事件よりも、有名な『I Have a Dream』の演説よりも後の出来事であって、その時には既に公民権法も成立していたと言う事。公民権法の成立が、公民権運動のゴールでは無かったんですね。もっと歴史を知るべきですね。中々考えさせられました。
強いメッセージ性
衝撃的なオープニングで映画全体のトーンがセットされ、その緊張感が最後まで続きました。
出演者自身の人生、そして父母、祖父母の世代の人生を重ねた様な演技は通常の映画の範疇を超える印象でした。
映像以上に言葉の中にこの映画の良さが光る作品ではないでしょうか。
アメリカに与えられた民主主義をもう一度見直す為にも、オススメの映画です。
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